JAXAと共同で新しい海洋予測を開始

JAXAと共同で「海中天気予報」システムの運用を開始

海洋研究開発機構(JAMSTEC)のアプリケーションラボ(APL)は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の地球観測研究センター(EORC)と共同で、日本付近の「海中天気予報」(海洋予測)を行う新しいシステム JCOPE-T DA を開始しました。 JCOPE-T DAはJAXAが提供する人工衛星による海面水温観測を今まで以上に海洋予測へ活用するために開発されました。

このシステムでは、土曜日を除く毎日、約2週間先までの予報を行って行きます。海中天気予報によって得られたデータは、JAXAが提供する可視化サイトで公開されます。

概要については、JAXA EORCによる解説文をご覧ください。

地球が見える 2018年
シリーズ「衛星データと数値モデルの融合」(第2回)
衛星海面水温を用いた「海中天気予報」システムの運用を開始しましたhttps://www.eorc.jaxa.jp/earthview/2018/tp181107.html

JCOPE-T DAの特長

新しい海洋予測JCOPE-T DAは、黒潮親潮ウォッチで従来使ってきたJCOPE2Mに比べて以下のような特長があります(表1)。

(1) JCOPE2Mは日本周辺の海を南北約9kmx東西約9kmの箱に分割して、その中の温度や流速を計算しています。JCOPE-T DAではそれが南北約3km×東西3kmになります。デジタル写真のように画素数で表現すると、3×3=9倍の画素数になることを意味します。このように分解能を高くすることでJAXAの提供する高分解能の人工衛星のデータをより活用できるようになりました。予測で日本沿岸域の小さな変化をより良く再現できるようになります。

(2) JCOPE2Mでは計算の更新が1週間に2回でしたが、JCOPE-T DAでは土曜日を除く毎日更新します。これによりJAXAの提供する人工衛星のデータ含む最新の観測を毎日取り込んだ予測を提供することが可能になりました。

(3) JCOPE2Mでは潮汐(潮の満ち引き)による海洋変化は計算していませんでした。JCOPE-T DAでは潮汐の計算も行います。

(4) JCOPE2Mでは予測計算を行う時、天気に関しては平年どおりの天気が続くとして計算していました。このため、天気の影響が大きい海面水温の予測などは黒潮親潮ウォッチではあまり見せてきませんでした。JCOPE-T DAでは、太陽からの日射や風の効果に関しては天気予測[1]の情報を与えています。計算を毎日更新しているので、最新の天気予測を使用しています。JCOPE-T DAでは海面水温の予測もJAXAの可視化サイトを通じて開示しています。

(5) 以上のような改良点によりJCOPE-T DAの計算は膨大になります。そのため、予測の長さは当面2週間先までです。約2か月先までの長期予測に関しては従来通りJCOPE2Mを活用します。

JCOPE2M JCOPE-T DA
(1) 計算の最小面積 約9km四方[2] 約3km四方[3]
(2) 計算の更新頻度 1週間に2回 土曜日を除く毎日
(3) 潮汐の計算 無し 有り
(4) 天気予測の活用 無し 有り
(5) 予測の長さ 約2か月先 約2週間先

表1: JCOPE2MとJCOPE-T DAの比較

JAXAの提供する可視化サイト

毎日更新されるJCOPE-T DAによる予測はJAXAが提供を開始した可視化サイトで見ることができます。

可視化サイトには2種類あります。

  1. 人工衛星「ひまわり」観測とJCOPE-T DAの比較するサイト
  2. JCOPE-T DAの水平分布と深さ(鉛直)方向の分布を可視化するサイト

それぞれのサイトの使用したデモンストレーション動画を作成しましたので、使い方の参考にしてください。

1. 人工衛星「ひまわり」観測とJCOPE-T DAの比較するサイト

 

2. JCOPE-T DAの水平分布と深さ(鉛直)方向の分布を可視化するサイト

今後の黒潮親潮ウォッチ

「ちきゅう」のための海流予測4の連載をご覧の方はお気づきかもしれませんが、「ちきゅう」のための海流予測では既にJCOPE-T DAの使用を開始しています。

黒潮予測親潮予測の記事でも、今後はJCOPE-T DAを活用していきます。2週間先までの短期の沿岸影響についてはJCOPE-T DAを、黒潮大蛇行の今後など2か月先までの長期見通しについてはJCOPE2Mを使用する予定です。

黒潮予測解説については1週間に1度、親潮予測の解説については一か月に約1度程度ですので、毎日更新される最新の予測を見たい場合には、上で解説したJAXAの可視化サイトをご利用ください。

 

 

  1. [1]JCOPEではNCEP(National Centers for Environmental Prediction:米国国立環境予報センター)の計算を使用しています。
  2. [2]正確には南北1/12°×東西1/12°。
  3. [3]正確には南北1/36°×東西1/36°。

美山 透

海の変化は、漁業海運エネルギー天候など様々なことに影響します。海洋予測がもっと身近なものになるように、頭をしぼって書いています。