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センター長挨拶

地球深部探査センター センター長

「地下は、未来だ。」ですよね

毎日の通勤に地下鉄(東京メトロ)を利用していますが、最近駅で目に入ってきたポスターに書かれていたコピーに感銘しました。それは「地下は、未来だ。これからも。」というもので、地下鉄開通90周年(1927-2017)を記念して作成されたもののようです。日本で最初の地下鉄銀座線をモチーフにデザインされた黄色系のポスターに目をみはります。1927年といえば、地球科学者(だけではありませんが)にピンとくるのが関東大震災(1923年)から4年後か・・・という印象で、まだまだ東京は復興の最中で、そんな中で地下鉄の運行開始は、大きな希望を市民に与えたのではないかと想像が膨らみます。

1923年(大正12年)9月1日の昼時、関東地方をマグニチュード8の地震が襲いました。私の祖母から聞いた話では、昼飯の準備をしている時で、慌てて外に飛び出したら、地面が割れるのを見たという体験話を子供の頃に聞いたことを思い出しました。最近の知見では、この地震を引き起こしたのは、相模湾から東京湾口、そして房総半島にかけてのフィリピン海プレートとユーラシアプレート(もしくは北米プレート)の境界部、つまりプレート境界断層であったことが解っています。しかも地震断層面上での破壊の進展過程なども解明され、関東地震のメカニズムの解明は、今も多くの研究者によって進められています。このような研究が進められたのは、しっかりした地震波の記録が様々な場所で存在していたからでした。まさに地震先進国として、科学的な監視がなされていた賜物であるといえます。

「ちきゅう」は2007年からIODP科学掘削を続けていますが、南海トラフや日本海溝で海溝型巨大地震の研究のための掘削を行ってきました。その成果はすでに科学論文として公表されていますが、一言でいえば教科書を書き換える成果が出てきたということです。地震や津波を発生させるような場所でないと考えられてきたところ(非地震性帯)が、実は高速で地震性滑りを起こし、大きな地殻変動を伴い、大津波の発生源となっていることを、「ちきゅう」による掘削で明らかにしたのです。さらに最近の南海トラフでの成果によると、比較的大きな地震に励起されてスロー地震が多発したりすることも、「ちきゅう」の掘削孔内で観測したデータ解析から明らかになりました。なんと約70年ぶりに東南海地震を引き起こした断層面が活動を開始した可能性も指摘されています。しかしその変動量は1-2cm程度という極めて小さい地殻変動なのですが、孔内での観測は、それを連続的に記録し、世界で初めての成果へと導きました。もしかすると、スロー地震から巨大地震へと進展する過程も監視できるかもしれません。そんなポテンシャルを感じさせる成果が発信されています。

大地の動きは、私たち人間の生活スケールに比べれば、非常に遅いものです。しかし確実に変化し続ける大地の動き(言い換えれば、地震の準備過程)を監視することも可能になりつつあり、その成果が新たな地震像を描き出すことにも貢献しようとしています。地下空間を有効に利用しようという発想から地下鉄が生まれ、現代の便利で安全な社会が構築されてきましたが、同様に地下空間での大地の動きの監視(長期孔内観測)は、高精度の地殻変動観測を可能にし、安全・安心な未来の社会構築に貢献するものと期待しています。そう、まさに「地下は、未来だ。」ですよね。平成29-30年度は、南海トラフにおいて、前人未到の領域まで科学掘削を行うべく、準備をしています。これからも「ちきゅう」の活動にご注目ください。

2017年10月3日
倉本 真一
CDEXセンター長
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