
番外編「尋ね人」2010年10月22日
西暦2010年10月9日午後14時頃、東京北の丸公園内の科学技術館において、「普通の研究者」タカイをキリキリ舞いさせた
「ちきゅうの超絶位置保持システムについてボクが納得がいくように解説してくれんかねー、キミィー」
という驚きで周囲20mにいた大人の顔面から血の気が引いたぐらい鋭い質問をきっぱりとしてくれた
(1)推定小学生2-5年生とおぼしき男の子。
「ワタクシは将来、小説家を目指しておりますが、人間の職業選択における安西先生のいう「断固たる決意」というのは、人生のどのタイミングで為すべきことでございますでしょうか?」
という「2番じゃだめなんですか?」もびっくりの、真摯かつ丁寧な物腰で人間の真理を突いた質問をしゃなりとしてくれた
(2)推定小学生3-6年生とおぼしき女の子。
将来のちきゅう・うちゅう生物学研究所(未だ設立予定はありませんが、JAXAとJAMSTEC、その他多くの研究期間や大学の協同により2020年頃設立希望中)の支配下登録選手を目指して、育成選手契約を希望します。
とりあえず、現在、背番号#1と#2を用意をしております。もちろん背番号#1031はすでに埋まっておりますが、ぜひ他球団と契約される前に、我がちきゅう・うちゅう生物学研究所(仮名)との育成選手契約を希望します。
契約金は年間「20ジュール」程度を提示させて頂きます。マニアックですみませんが、アデノシン三リン酸が1ミリモル程度作れます(地殻内の微生物からすると結構なエネルギー量です)。ちゃんとわかりやすく言うと、限りなくただ働きです。
ただし、育成契約選手が「ちきゅう・うちゅう生物学研究所」(仮名)の前身基地のJAMSTECプレカンブリアンエコシステムラボラトリーやJAMSTEC地球深部探査センターIODP推進室を見学希望される際には、タカイもしくはつぶやき編集長がその案内役を務めることを保証します。「ちきゅう」に乗って「草彅剛&柴咲コウ ごっこ」できる券も付いてくるかもしれません。あと、もらってもあんまりうれしくないJAMSTECグッズをタカイのポケットマネーからプレゼントするかもしれません。
代理人契約は、おとうさんかおかあさん、おじいちゃんかおばあちゃん、にかぎり認めます。親戚のおじさんもしくはクラブの顧問先生はだめです。大概、親戚のおじさんやクラブの顧問先生は契約金をつり上げる役割を担う場合が多いからです。また決して大リーガーのまねをしてアーン・テレム氏のような敏腕代理人は雇わないでください。
育成契約を承認される場合は、ツイッターの返信@Chikyu_JAMSTECなり、chikyu-tv@jamstec.go.jpなりに至急連絡されたし。
また今後、日本各地で我が「ちきゅう・うちゅう生物学研究所」(仮名)の育成選手を発掘していきます。年齢20歳以下の日本の将来の「地球」や「海」、「宇宙の生命」の科学を楽しみながら牽引・主導・応援・マスコミ操作・永田町工作・霞ヶ関工作することができそうな一芸に秀でた若者を、勝手に目を付けて育成選手登録してゆく予定です。背番号#1031までたどり着くことが目標です。
登録された若者は、Jリーグ風に言えば「サポーター」です。あっ、この時点で「育成選手契約」という論旨が破綻しました。やはり単なるノリで話をつくるとあっというまに論旨が破綻しますね。まあよくあることです。
ともあれ「はやぶさくん」達もそういう風にして多くの人々に支えられていましたね。ある意味これは「人間の盾」作戦あるいは「泣き落とし」という孫子から続く超高等兵法なのじゃ。でもこれは地球深部探査船「ちきゅう」とか、そういうちっちゃな目的ではないんです。本当に「ちきゅう・うちゅう生物学研究所」(仮名)のようなものができたらすごいんです。
そんな研究所は、世界中を見てみても、NASAにこじんまりとある程度で、スペインの天文学研究所にもそう言う感じの一部門があるくらいなんです。日本では専門家のネットワークが作られたぐらいで、まだまだこれからの状態なんです。
JAMSTECでは、これから地球の深部を世界に先駆けて、まだまだどんどん追求してゆくわけですが、地球を理解すればするほど、宇宙における惑星地球の一般性や特殊性というものと大きな視点で対峙せざるを得ないと思います。そのときには、従来のナントカ学という旧態依然の知識・見識・常識に捕われた思考では太刀打ちができなくなる可能性があります。
育成選手達は、その日に向けて、せっせと「人間性」と「体力」と「吸収力・柔軟性」と「行動力」と「個性」、そして「いつか断固たる決意をする勇気」を磨いておきましょう。そしていつか現場で一軍のプロフェッショナルとして、いっしょに仕事ができればサイコーです。
そんな日がくることを願っています。
航海とは何の関係もありませんでしたが、トークイベントの二人の質問に感銘を受けておもわず書いてしまいました。育成選手契約は、冗談に受け取ってもらっても結構ですが、真剣に受け取ってもらっても(たぶん)大丈夫です。もし本当に連絡があったら、ぜひ上記条件を明記した架空の契約書を送りますのでサインをお願いします。
皆様、本当に長らくおつきあいいただきありがとうございました。
(おそらく)今度こそ、本当にお別れです。
ときには、何かのついでに、
「ちきゅう」、「しんかい6500」、そしてそれらと共に真理を解き明かそうとする科学者に乾杯を...。
高井 研

「さらば ちきゅう」2010年10月4日
みなさん、沖縄熱水直下生命圏掘削シーズン1が終了しました。
これで晴れて、コチーフ・タカイから「普通のオンナノコ」タカイに戻れます。
航海終了前の2日間ぐらいは、サンプルの処理やら航海のまとめやらで、ほぼ徹夜状態でした。現在もかなり睡魔に襲われております。
この航海の最後の山場は、「越後屋オヌシもワルよのぉーフォフォフォ掘削」でした。その結果は、見事に「いやいやお代官様こそ~ケッケッケ」でした。
「なんじゃそりゃー、読者をバカにしてんのか」という突っ込みが聞こえそうです。
以前、「まあいい、しょせん読者は数人じゃ!」と言いましたが、実は知ってんだよねー。結構な読者がワシの大幻術「無限月読」の餌食になっていることを。あ、「無限月読」知らない人はかるく無視してくださいね。ウィキペディアには載ってませんから。
ともかく、「つぶやき」やら「○ちゃんねる」等で、予想以上人々に読んで頂き、さらに励ましの声を頂き、誠に感謝しております。これを機に、「ちきゅう」やスキンヘッドのヤーさんにしか見えない大物研究者もジョーネツ絶賛放送中のJAMSTECをぜひごひいきにしていただけると幸いです。
せっかくの最終回と言うことなので、多くの方々の励まし感謝セールと銘打って、「いやいやお代官様こそ~ケッケッケ」も含めて、この航海の現段階の成果を一挙に公開しましょう。
「結婚には3つのフクロが大事」とはよく聞く話ですね。正確には3つめがイマイチよくわからないのですが、
「この航海には4つの世界初があった」
後年、そう語り継がれることになるだろう。
その1.世界初、掘削による高温人工熱水噴出孔の創造(しかも4つも作っちゃった)
その2.(おそらく)世界最大の巨大海底下熱水湖の発見
その3.(おそらく)世界初、海底下の塩分に富んだ熱水の沈滞現象の直接証拠
その4.今なお沖縄の海底下で形成され続けている「黒鉱」とその鉱床構造貫通試料採取
本当はいちいちしっかり説明できればいいのですが、いかんせん成果はこれから科学論文としてしっかりと完成されなければいけないものですので、現時点では東スポ的見出しだけでお許しください。
いずれの成果も、今後が非常に楽しみなものです。特に2番目と4番目は互いに強く関係しているもので、極めて大きな社会的インパクトがあります。なぜならいわゆるあの話題沸騰中のアレですからね。アレ。アレメタル。
ところで、熱水直下微生物の証明はどうなったんだという疑問も当然ありましょう。
まあそれについては、タカイ得意の「いいよ~すごくいいよ~」とは言えませんね。いずれにせよ、その結果が出るにはまだまだ時間と研究が必要なので、今後の研究進展をぜひ期待しておいてください。
この航海は毎日、サイエンス的には、驚きと落胆と喜びの連続でした。ものすごく毎日が楽しかったですね。「コア オン デッキ」のアナウンスを聞いて、コアカッティングエリアでコアサンプルを待つ瞬間。サイコーにワクワクしました。
しかし、一方では、25人も国も文化も分野も違う研究者をまとめるのは、かなりストレスフルでした。まあ実際、殴り倒して海に放り込みたくなったのは、ごく2人にすぎませんが....。一方では、この機会がなかったら出会わなかったであろう人たちの出会いも大切な思い出です。そう言う意味では、恵まれていたのかもしれません。
「ちきゅう」の掘削エンジニア達との時間も楽しかった。次はあーしようとかこーしようとか、互いにベストを尽くし合う時間こそプロフェッショナルの楽しみです。
「HPCSの時代」は一躍流行語になりました。軟らかい地層が現れたら、HPCSピストンコアリング。とにかく、タカイ「HPCS(ブッ刺しコア)の時代が来ましたな」、チョイ悪ちきゅう船上代表「来てません」という会話がしつこく繰り返されたあげく、最後の方は、チョイ悪「HPCSの時代ですかね?」タカイ「ようやく掘削というものの本質が分かってきたようですね」という呼吸でした。
あと船上のコアプロセスや科学計測を手伝ってくれるテクニシャンの人々にも感謝の気持ちでいっぱいです。「あいつおかしいよねー。シバキタイよねー」という会話で盛り上がりました。もちろん約2名のことです。しかし、暴走特急や手抜き事業にもキレることなく、最後までベストを尽くしていただきました。えっ?一番嫌われていたのはオレだって?うーん、まさか。
つぶやき編集長は、センス抜群の頼れる広報マンでした。じつはこのレポート、かなりつぶやき修正を入れてくれているのです。
毒電波を受信した私の脳は、ワルノリがとまらなくなる時があります。ギリギリのラインを読んでくれるつぶやき編集長がいるから、フリーに書ける訳です。帰ったら2人とも上層部に呼び出し食らったりして。
ちきゅうTVのカメラマン君は、典型的ドリーマー型ダメ人間です。「映画を作って食っていきたいっす」だって。深夜にハイになって「おしゃべり」したけど、実は「やる奴」なんです。彼の抜くシーンはセンスいいなと思います。ただ「おれを色物扱いするのがゆるせん」。もう少しかっこいいシーンをとれよ。
本当にいろんな人のおかげで実現したこの航海。終わりました。ご支援、ご協力、励まし、ありがとうございました。
大学時代の2年間、京都の四条烏丸の舟鉾町に住んでました。日本3大祭りの祇園祭の鉾というのは、1ヶ月以上かけてちょっとずつ作られていきます。うちの町は舟鉾っていうかわいい鉾を出すわけですが、毎日、ちょっとずつ祭り(ハレ)の日が近づくのを実感できるところでした。そして最後の3日間、祭りはクライマックス を迎えます。祭りの終わった次の日の、すごく「強者どもが夢の跡」的なセンチメンタルな風景がいまなお心に残ってます。
研究航海が終わり、すべての研究者が去ったこの「ちきゅう」のラボマネージメントフロアは、あの熱さがこころなしか和らいだような夏の日の風景と重なります。
さらば、ちきゅう。
さらば、2010年の夏の祭り。
でも、
来年には沖縄熱水直下生命圏掘削シーズン2がきっと始まるよ!
始まるように、これから政治工作じゃ!世論操作じゃ!「無限月読」じゃ!
(fin)

「 fin 」の写真2010年10月2日
みなさん。これは最終回ではありません。つぶやきです。
つぶやき編集長の写真のセンス抜群です。彼の写真からは、物語が聞こえてきます。本当の「しゃべり」はイマイチだけど、「写真とつぶやき」、サイコーです。
あの「fin」の写真....
見た瞬間、こみ上げてきました。
泣きそうになりました。
いや、ちょびっと泣いた(陰で)。
「全米」は泣かないかもしれないが、少なくともタカイは泣きました。
あの写真を見た瞬間、この6ヶ月のつらい闘い、そして楽しい祭りが終わったことを初めて実感しました。
タカイが贈る最優秀フォト賞をつぶやき編集長に贈ります。
さあ、つぶやきパパが早く家に帰れるように(コチーフ・タカイが松○町に繰り出せるように)、航海後のアウトリーチ活動を神速で片付けてやる。
沖縄の取材陣の皆さん、心してかかってくるようにね。
(タカイプレゼンツ最優秀フォト賞を受賞したつぶやきもどうぞ)