ちきゅうレポート
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「さらば ちきゅう」2010年10月4日

みなさん、沖縄熱水直下生命圏掘削シーズン1が終了しました。
これで晴れて、コチーフ・タカイから「普通のオンナノコ」タカイに戻れます。

航海終了前の2日間ぐらいは、サンプルの処理やら航海のまとめやらで、ほぼ徹夜状態でした。現在もかなり睡魔に襲われております。

この航海の最後の山場は、「越後屋オヌシもワルよのぉーフォフォフォ掘削」でした。その結果は、見事に「いやいやお代官様こそ~ケッケッケ」でした。

「なんじゃそりゃー、読者をバカにしてんのか」という突っ込みが聞こえそうです。

以前、「まあいい、しょせん読者は数人じゃ!」と言いましたが、実は知ってんだよねー。結構な読者がワシの大幻術「無限月読」の餌食になっていることを。あ、「無限月読」知らない人はかるく無視してくださいね。ウィキペディアには載ってませんから。

ともかく、「つぶやき」やら「○ちゃんねる」等で、予想以上人々に読んで頂き、さらに励ましの声を頂き、誠に感謝しております。これを機に、「ちきゅう」やスキンヘッドのヤーさんにしか見えない大物研究者もジョーネツ絶賛放送中のJAMSTECをぜひごひいきにしていただけると幸いです。

せっかくの最終回と言うことなので、多くの方々の励まし感謝セールと銘打って、「いやいやお代官様こそ~ケッケッケ」も含めて、この航海の現段階の成果を一挙に公開しましょう。

「結婚には3つのフクロが大事」とはよく聞く話ですね。正確には3つめがイマイチよくわからないのですが、

「この航海には4つの世界初があった」

後年、そう語り継がれることになるだろう。

その1.世界初、掘削による高温人工熱水噴出孔の創造(しかも4つも作っちゃった)
その2.(おそらく)世界最大の巨大海底下熱水湖の発見
その3.(おそらく)世界初、海底下の塩分に富んだ熱水の沈滞現象の直接証拠
その4.今なお沖縄の海底下で形成され続けている「黒鉱」とその鉱床構造貫通試料採取

本当はいちいちしっかり説明できればいいのですが、いかんせん成果はこれから科学論文としてしっかりと完成されなければいけないものですので、現時点では東スポ的見出しだけでお許しください。

いずれの成果も、今後が非常に楽しみなものです。特に2番目と4番目は互いに強く関係しているもので、極めて大きな社会的インパクトがあります。なぜならいわゆるあの話題沸騰中のアレですからね。アレ。アレメタル。

ところで、熱水直下微生物の証明はどうなったんだという疑問も当然ありましょう。

まあそれについては、タカイ得意の「いいよ~すごくいいよ~」とは言えませんね。いずれにせよ、その結果が出るにはまだまだ時間と研究が必要なので、今後の研究進展をぜひ期待しておいてください。

この航海は毎日、サイエンス的には、驚きと落胆と喜びの連続でした。ものすごく毎日が楽しかったですね。「コア オン デッキ」のアナウンスを聞いて、コアカッティングエリアでコアサンプルを待つ瞬間。サイコーにワクワクしました。

しかし、一方では、25人も国も文化も分野も違う研究者をまとめるのは、かなりストレスフルでした。まあ実際、殴り倒して海に放り込みたくなったのは、ごく2人にすぎませんが....。一方では、この機会がなかったら出会わなかったであろう人たちの出会いも大切な思い出です。そう言う意味では、恵まれていたのかもしれません。

「ちきゅう」の掘削エンジニア達との時間も楽しかった。次はあーしようとかこーしようとか、互いにベストを尽くし合う時間こそプロフェッショナルの楽しみです。

「HPCSの時代」は一躍流行語になりました。軟らかい地層が現れたら、HPCSピストンコアリング。とにかく、タカイ「HPCS(ブッ刺しコア)の時代が来ましたな」、チョイ悪ちきゅう船上代表「来てません」という会話がしつこく繰り返されたあげく、最後の方は、チョイ悪「HPCSの時代ですかね?」タカイ「ようやく掘削というものの本質が分かってきたようですね」という呼吸でした。

あと船上のコアプロセスや科学計測を手伝ってくれるテクニシャンの人々にも感謝の気持ちでいっぱいです。「あいつおかしいよねー。シバキタイよねー」という会話で盛り上がりました。もちろん約2名のことです。しかし、暴走特急や手抜き事業にもキレることなく、最後までベストを尽くしていただきました。えっ?一番嫌われていたのはオレだって?うーん、まさか。

つぶやき編集長は、センス抜群の頼れる広報マンでした。じつはこのレポート、かなりつぶやき修正を入れてくれているのです。

毒電波を受信した私の脳は、ワルノリがとまらなくなる時があります。ギリギリのラインを読んでくれるつぶやき編集長がいるから、フリーに書ける訳です。帰ったら2人とも上層部に呼び出し食らったりして。

ちきゅうTVのカメラマン君は、典型的ドリーマー型ダメ人間です。「映画を作って食っていきたいっす」だって。深夜にハイになって「おしゃべり」したけど、実は「やる奴」なんです。彼の抜くシーンはセンスいいなと思います。ただ「おれを色物扱いするのがゆるせん」。もう少しかっこいいシーンをとれよ。

本当にいろんな人のおかげで実現したこの航海。終わりました。ご支援、ご協力、励まし、ありがとうございました。

大学時代の2年間、京都の四条烏丸の舟鉾町に住んでました。日本3大祭りの祇園祭の鉾というのは、1ヶ月以上かけてちょっとずつ作られていきます。うちの町は舟鉾っていうかわいい鉾を出すわけですが、毎日、ちょっとずつ祭り(ハレ)の日が近づくのを実感できるところでした。そして最後の3日間、祭りはクライマックス を迎えます。祭りの終わった次の日の、すごく「強者どもが夢の跡」的なセンチメンタルな風景がいまなお心に残ってます。

研究航海が終わり、すべての研究者が去ったこの「ちきゅう」のラボマネージメントフロアは、あの熱さがこころなしか和らいだような夏の日の風景と重なります。

さらば、ちきゅう。

さらば、2010年の夏の祭り。





でも、

来年には沖縄熱水直下生命圏掘削シーズン2がきっと始まるよ!

始まるように、これから政治工作じゃ!世論操作じゃ!「無限月読」じゃ!

(fin)