第3章 日本へ
~いざ日本へ!~

vol.20 いざ日本へ!

「みらい」の現在地は、北緯57度24分、東経178度31分です。

北極での観測を終え、ベーリング海峡を抜けて日本へ向け回航中です。観測作業は一段落といったところで、「みらい」は移動中となり、CTDを下ろしたりといった観測作業はひとまず終了しています。

観測作業はまだまだ続きます
観測作業はまだまだ続きます

しかし、仕事はまだまだ残っています。北極で採水した海水の分析作業やデータの事後処理、測器のメンテナンス、荷降ろしの準備まど細々とした作業を今、ひとつひとつ片付けているところです。

また、クルーズレポート(航海の報告書)のまとめ作業もあります。

航海はまだ終わっていませんが船が日本に向かって着々と進んでいると思うと、なんだかワクワクしてきます。

 さて、この辺で、頂いた質問にお答えしようと思います。

「北極海も台風は発生しますか?」タイショウくん(8才)

台風は発生しませんが、低気圧は発生します。この航海中もレーダー画像で渦を巻いた雲や風の動きをいくつか見ました。
でも、沖縄に来るような台風はないようです。

低気圧のレーダー画像  
低気圧のレーダー画像  

vol.21 「イッカクは見ましたか?ペンギンはいるのですか?」

「イッカクは見ましたか?ペンギンはいるのですか?」たさとさん(4才)すえよしさん

今回の航海では残念ながらイッカクと出会うことはありませんでしたが、セイウチを見たという人がいました。「みらい」のすぐ横まで遊びに来ていたそうです。
また他の観測技術員の話だと過去に見たことがあるという人がいました。

私が北極で見かけた生き物は鳥くらいでしょうか。鳥はよく見かけました。
種類や名前は分かりませんが、カモメの仲間でしょうか?

ペンギンは北極にはいませんでした。北極には陸地がないので、ペンギンが暮らせないのだと思います。南極には大陸があるので、ペンギンも暮らすことができるのでしょう。

鳥はたくさん飛んでいました
鳥はたくさん飛んでいました

vol.22 横浜へ向け航行中

現在の船内の日時は10月4日の21時です。日付変更線を通過したので、日付は日本と足並みがそろいました。位置は北西太平洋、カムチャッカ半島沖です。

日付変更線の通過は10月1日だったので、9月30日の次の日は一気に10月2日になりました。
(10月1日が誕生日の人はかわいそうですね。。。でも日本時間でお祝いすればいいですね。)

日付変更線を超えました
日付変更線を超えました

外気温は13.9℃と北極にいた頃と比べると15℃近くも暖かくなりました。

先週に比べると、1~2枚薄着しても平気な感じです。北極を出てから、外洋に出たせいでしょうか、船が揺れるようになりました。小さな低気圧をいくつも突っ切っているようで、帰り道は今航海で最も揺れているように感じます。

さらに、沖縄にまた台風が近づいてきているようで、この台風が太平洋に抜ける頃にはまた「みらい」とぶつかるような気がします。

日本までもうすぐです
日本までもうすぐです

船酔いは航海2日目以降全くありませんが、酔わなくとも「揺れ」は大変です。
仕事をするにも、廊下を歩くにも、ご飯を食べるにも、お風呂に入るにも、トイレに行くにも程度の差こそあれ、とにかくずっと揺れているわけですから揺れの大きい日にはバランスを取るのに苦労します。
真っ直ぐ歩けません。。。

それでも、「みらい」には減揺装置が付いていることもあって、他の船舶より、「揺れなくて快適な船」と観測技術員の間では言われています。
減揺装置とは、船の揺れと反対方向に振り子の様に重しを揺らして、船の動揺を軽減する装置です。振り子の加重を船体に対して最大限に発揮するため、設置場所は船の中央上部となっています。

ちなみに、減揺装置の動作状況は船内各所に備え付けられているテレビモニターで確認することが出来ます。
今日は揺れるなぁとモニターを確認すると減揺装置が停止していたりします。

減揺装置
減揺装置

先日、北極での観測作業の労をねぎらうとともに、乗船者同士の懇親を深めるため、船上でバーベキューパーティーがありました。スケジュール的にはもう少し後で日本に近づいてからの予定でしたが、あらかじめ海況が悪化する事が予測されていたため、早めの実施となりました。寒い中ではありましたが、お肉美味しかったです。

航海の最後はバーベキューパーティーです
航海の最後はバーベキューパーティーです

vol.23 「どうすれば船酔いしませんか?」

昨日、船の揺れのお話をしたので今日はみなさまに頂いた質問の中から儀保さん(24才)の質問に答えたいと思います。
「どうすれば船酔いしませんか?」

船酔いは個人差があると思うので、「こうすれば大丈夫!」というような特効薬や裏技はないのではないかなぁと思います。(あったら私も知りたい)
梅干や生姜が効くという話も聞いたことがあります。この辺は酔いというより酔いから来る吐き気を多少紛らわすくらいかなぁと個人的には思っています。

※注 別航海の時の写真です
※注 別航海の時の写真です

船酔いのメカニズムとして、よく聞くのは「三半規管が感知する体の傾き(揺れ)」と「視覚で感じる体の傾き(揺れ)」にギャップが生じた時に起こる。というものがあります。車やバスの場合は、車窓から出来るだけ遠くの視差の少ない所を見て、視覚で感じる体の揺れと実際の体の揺れを近づけてあげるとよいということを聞いたことがあります。

「みらい」のような大きな船の場合は、室内にいることが大半ですし、仕事もしなければいけないので、窓からずっと外を眺めているわけにもいきません。

それでは、どうするかというと「酔い止めなんか飲むより慣れろ」と先輩の観測技術員には言われました。。。

あまりに体育会的な雑なアドバイスのように聞こえるかもしれませんが、アルバイト乗船の学生さんらをはじめ、数々の乗船初心者を見てきた上での先輩としての最良のアドバイスだったのだと今では思います。

船内の階段は手すりがついています
船内の階段は手すりがついています

私の場合は、航海2日目には1日目の懇親会の二日酔いも相まって多少酔いましたが、それ以降は全く酔いませんでした。
酔うことは避けられないので、通り越して慣れてしまう方が早いかと思います。

しかし、乗船の経験が多いはずの観測技術員の中にも、「普段は大丈夫だが、(海が)荒れると酔う。」という方もいました。
やはりこの辺はどうしても個人差があるようです。

引出しは揺れで開かないようにしっかり固定されています
引出しは揺れで開かないようにしっかり固定されています

vol.24 もう日本です

現在の船内の日時は10月8日14時45分です。もう日本と日付も時間も一緒です。位置は宮城県沖です。外気温は16.90℃です。だいぶ日本に近くなり、テレビ(BS)も受信できるようになりました。

ニュースで陸の情報が入ってくるようになりました。今は明後日の横浜港入港に備えて、航海中に使用した様々な資機材の片づけと梱包、そして陸揚げする順にまとめる作業を行っています。

ボックスパレットを決められた順番通り整理します
ボックスパレットを決められた順番通り整理します

荷物はボックスパレットというカゴ単位でまとめます。内容物や下ろす順序によって細かく配置が決まっているので、その通り配置する作業はまるでパズル(倉庫番やテトリス)のようです。頭を使いながら、体力も使い、大変です。。。

vol.25 船の上で怪我をしたり病気にかかった場合は。。。

さて、このように船の上では、危険な作業がたくさんありますが、万が一ケガをした時や、病気にかかった場合はどうするのでしょうか。

3名の方よりこんな質問をいただきました。
「観測技術員の方が病気になったらどうするんですか?」喜屋武(16才)
「船の中で病気になったらどうするんですか?」金城さん(9才)
「船でだれかが死んだらどうする」さきはまさん(10才)

病気やけがをした場合には、「みらい」には、「医務室」と「病室」があり、そこで手当や看病をすることになります。病室は他の区画と隔離され、病室内のトイレや空調も他とは別の配管となっており、インフルエンザ等の伝染病が発生した時も病気が拡散しないような工夫がされています。

「みらい」にはお医者さんは乗っていないので、人命にかかわるような大けがをした時など一刻を争う場合は、急きょ近くの港へ立ち寄ったり、ヘリコプターで迎えに来てもらい、最寄りの病院へ緊急搬送することになります。

医務室内
医務室内

実際には、観測技術員を含め、全ての乗船者はプロですから、けがをしないよう普段から気をつけていますし、病気をしないよう、自己管理をしっかり行っているので、この医務室や病室が使われることはほとんどないそうです。
しかし、いつなんどき必要になってもすぐに使用できるよう、この部屋は日々手入れされた状態になっています。

ちなみに、航海中に万が一誰かが亡くなるような事があった時には、遺体が傷まないよう、保冷庫等に一時的に保管されるなどの対処がされるようです。
過去に実例はないそうですが。