図1は北極海の地図です。
地図の上側が大西洋でグリーンランド海とバレンツ海があります。下側が太平洋で、チュクチ海が広がります。
北極海の面積は全海洋の3%に過ぎません。しかしこのたび、地球温暖化に関わる重要な働きをすることが定量的に示されました。
北極海が吸収するCO2量を定量化 ―海全体の約10%を吸収・季節や海域による差異も明らかに―
ココがポイント
●大気と海は常に二酸化炭素(CO2)を交換していて、その交換量の正確な見積りは地球温暖化予測において重要課題だが、北極海だけは直接的な見積もりがされていなかった。
●このたび、新たな手法を用いることで、北極海のCO2吸収量を直接見積もって定量化することに成功した。
●北極海の面積は海全体の約3%に過ぎないが、そのCO2吸収量は、海全体が1年に吸収するCO2の10%にあたることがわかった。
この論文をBiogeosciences誌に発表した安中さやか研究員にお話を聞きます。
大気と海は常にCO2を交換
――北極海が吸収するCO2量を定量化したそうですね。そもそも大気と海がCO2を交換するとは、どういうことでしょうか。
地球温暖化は、産業革命以降、人間活動によって急激に排出量が増加したCO2が主な原因とされます。そのCO2は大気と海の間で常に交換され、海はCO2を大気から吸収したり大気へ放出したりします。海のCO2濃度が大気のCO2濃度より薄ければ、海は大気からCO2を吸収します(図2左)。反対に、海のCO2濃度が大気のCO2濃度より濃ければ、海は大気へCO2を放出します(図2右)。
特に、風が強いほどCO2の交換量は多くなります。また、海氷が多い場合は海面が覆われてCO2の交換量は少なくなりますし、逆に海氷が少ない場合は海面が大気にさらされCO2の交換量は多くなります。
――どこの海でどんな吸収・放出があるのですか?
南北半球とも、中緯度域でCO2 の大きな吸収が見られます。低緯度からの表層水が高緯度へ南下・北上するに従って冷却され、水温が下がったことにより多くの二酸化炭素が大気から溶け込むことができるようになるためです。反対に赤道域では、CO2を多く含む深層の海水がわき上がりCO2が放出されます。
――大気と海のCO2の交換を知ることは、どのようなことにつながるのでしょうか。
大気と海洋の間のCO2の交換量を正確に見積もることは、地球温暖化予測の不確実性を低減させ、将来予測の精度向上につながります。