がっつり深める
海洋大循環に重要な南極底層水の体積が減少
解析はうまくいかない、でもプレッシャーはめいっぱい!
――この研究を振り返っていかがでしたか?
この研究は非常に苦しかったです。Deep NINJAを開発してアデリー/ジョージ五世ランド沖に投入した当初は、もっと単純に、南極底層水の季節変化について調べるつもりでした。ところが観測データの解析が思うように進まず、何をしてもしっくりこなかったのです。
自分がいま見ているのは、海氷下の深層までを観測した世界初の貴重なデータ。そして、論文を書くことはDeep NINJAの開発プロジェクトの集大成。それなのに、解析がうまくいかない。非常にプレッシャーを感じました。あらゆる解析をしたものの、ある日とうとうすることが尽きて、何を期待するでもなく南極底層水の密度1.0283g/㎤の深度のトレンドを引いてみました。普通、観測期間が短いときはトレンドを引かないものです。ところが出てきたそのトレンドをよくよく見ると、南極底層水がすごいペースで減少している。「なんだこれは」と。そこから方針が南極底層水の急速な減少に定まり、一気に進みました。
――今後はどのような研究をする予定ですか?
メルツ氷河舌の崩壊の影響は、海流を通じて他の海域にも広がっていると思われます(図10)。それを、Deep NINJAを使って調べたいと考えています。

――次の発表を楽しみにしています。ありがとうございました。