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田﨑さくらのさくラボ

【第1回】海流予測のスペシャリストを訪問!

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皆様、はじめまして。田﨑さくらと申します。私がDJとしてお世話になっているFM ヨコハマ(84.7MHz)がSDGs14「海の豊かさを守ろう」を強く推進していることから、同じ横浜市内に研究所があるJAMSTECの活動がずっと気になっていました。
今回、ご縁があってJAMSTECで働く方々にお話をうかがう機会をいただけることになりました。田﨑さくらの「さくラボ」、第1回目となる今回は、計算機システム技術運用グループの中川剛史(なかがわ・つよし)技術主任と環境変動予測情報創⽣グループの美⼭透(みやま・とおる)主任研究員にお話をうかがいます。

JAMSTECが世界に誇るスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」

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空中通路にいる私が見えますか?「地球シミュレータ」の外観は圧倒的です

今回私が訪れたのは、横浜市金沢区にあるJAMSTECの横浜研究所。
敷地内には大きな体育館のような専用の建屋があり、その2階部分に世界最高性能レベルのスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」が設置されています。
今回は特別に、スーパーコンピュータが設置されている計算機室の中にお邪魔して、中川さんに「地球シミュレータ」について色々と教えていただきました。

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中川 剛史

JAMSTEC付加価値情報創生部門
地球情報科学センター 計算機システム技術運用グループ 技術主任
「地球シミュレータ」をはじめとするJAMSTECの計算機システムの導入や運用を行なっている

中川:「地球シミュレータ」へようこそ。今日は何でも聞いてください。

田﨑:貴重な機会をいただき、ありがとうございます。この計算機室に入るのに中川さんの静脈認証が必要なんですね。まずそこに驚きました。

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計算機室内はかなりの広さです

中川:そうですね。スーパーコンピュータという重要な機械を設置している場所なので、セキュリティは厳しくする必要があります。JAMSTECの職員でも、誰でもこの中に入れるわけではありません。

田﨑:大きな機械が並んでいて圧倒されます…。これら全部で「地球シミュレータ」なんですか?

中川:その通りです。この計算機室はテニスコート4面分くらいの広さがあります。私たちの目の前にあるこの背の高いロッカーみたいなラックが81台あって、横5列・縦2列に配置されています。
各ラックの内部には多数のコンピュータが搭載されていて、それらを高速ネットワークケーブルで接続させることで、スーパーコンピュータ「地球シミュレータ」を構成しているんです。

田﨑:どれくらいの数のコンピュータが接続されているんですか?

中川:1412台の計算用サーバが接続されています。一人では解決できない問題でも、たくさんの人が集まれば解決できることがありますよね? それと同じことで、多数のコンピュータ同士を連携させながら、巨大で複雑な計算をするのがスーパーコンピュータの特徴なんです。

スパコンの計算能力はどれくらい?

田﨑:「地球シミュレータ」の計算能力が気になります。

中川:ちょっとイメージしづらいかもしれないんですが…。最大計算能力だと、だいたい1秒間に1億の2億倍の回数、約2京回の計算ができます。

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1秒間に2京回????

田﨑:すみません、まったくイメージできないです(笑)

中川:もう少し違う表現で言うと…。そうですね。いま日本の総人口がだいたい1億2千5百万人くらいです。ひとりが1秒に1回計算できるとして、その1秒に1回の計算を、日本人全員が24時間365日休まずやって5年かかる計算を、「地球シミュレータ」は1秒でできます。

田﨑:すごいということはよくわかりました(笑)
…それにしても、この部屋はずーっと音が鳴っているんですね。

中川:音の発生源はコンピュータに付いているファンや、私たちが立っている床の下にある空調システムから出る音です。パソコンやスマートフォンに複雑なことをさせると熱くなりますよね? スーパーコンピュータも超大量の計算によって熱を持ちます。発生した熱を冷やすために、冷たい空気を循環させていますから、室内で大きな音が発生するんです。
あと、近年のスーパーコンピュータは性能が上がったことで冷たい空気だけでは冷やしきれなくなっていて、この「地球シミュレータ」では水も使ってコンピュータを冷やしています。

田﨑:空冷と水冷の両方で冷やしているということですね。

中川:そうなんです。室温は17℃で、湿度も一定にキープしています。

「地球シミュレータ」で何を計算している?

田﨑:「地球シミュレータ」が地球温暖化や台風、海流、地震・津波などの研究に使われているということは、私も勉強してきました。やはり、JAMSTECが得意な海洋や地球の研究に特化したスーパーコンピュータなんですか?

温暖化時の夏の北極海の海氷予測(1851〜2100年)

中川:地球科学は得意な分野の一つですが、ナノテクノロジーや流体力学、構造力学などさまざまな分野で使われています。決して地球科学だけに使われているスパコンというわけではないんですよ。あとは、AIを用いた研究もできるようになっています。

田﨑:どれくらいの数の研究者の方が「地球シミュレータ」を使っていらっしゃるんですか?

中川:全体で700人くらい。JAMSTECの研究者に限って言えば180人くらいでしょうか。

田﨑:研究者の方がこの計算機室に来られることはありますか?

中川:いえ、まずないですね。来る必要がないんです。研究者は自分のオフィスや、テレワークの場合は自宅から、インターネットなどのネットワークに接続されているパソコンを用いて「地球シミュレータ」にリモートでアクセスします。

田﨑:つまり、その瞬間は、オフィスやご自宅のパソコンがこの「地球シミュレータ」につながっている。

中川:そうです。研究者が自分のパソコンで動かしたいプログラムやデータを入力すれば、この「地球シミュレータ」が計算を始める。そういう仕組みです。
計算したいことは前もって予約もできますので、研究者は土日にアクセスしたり、真夜中にずっと起きておく必要もありません。

田﨑:なるほど。よくわかりました。

中川:実際にシミュレーション計算をしている研究者の話は面白いと思いますよ。ぜひ色々と聞き出してみてください。

田﨑:はい! そうします。今日はお忙しいところ、ありがとうございました!

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電気を落とした計算機室内は神秘的な雰囲気でした