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田﨑さくらのさくラボ

【第1回】海流予測のスペシャリストを訪問!

海底火山の噴火で放出された軽石の動きをシミュレーション

田﨑:昨年、美山さんが行われた「軽石シミュレーション」は非常に注目を集めたと聞きました。マスコミの取材も凄かったそうですね。そもそもの経緯を教えていただけますか?

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美山:2021年8月に、小笠原諸島の海底火山である福徳岡ノ場(ふくとくおかのば)が噴火して、大量の軽石が放出されたんです。その約2カ月後、沖縄に軽石が大量に流れ着いたことで、漁船にエンジントラブルが起きて漁に出られなくなったり、あとは養殖していた魚が誤って軽石を食べて死んだりもしました。それを受けて、我々は10月下旬、軽石が今後どう流れていくかをシミュレーションしたんです。

田﨑:沖縄のビーチを軽石が埋め尽くしている映像は、私もニュースで見ました。もしこれが続いたら海はどうなっちゃうんだろうと心配になりました。

美山:そうですね。一時的なものでは終わらないとすぐに思いました。実際にシミュレーションした動画を見てみましょうか。

福徳岡ノ場の噴火と海流による影響について(海流予測モデルを利用した軽石漂流予測シミュレーション)

田﨑:すごい。短くてシンプルでわかりやすいですね。実際にこの予測の通りに流れていったんですか。

美山:そうですね。軽石は、日本の南の小笠原諸島からゆっくり海流に乗って、西方面と北方面に流れていくんですね。JAXAのデータも使いつつ検証すると「11月ごろに伊豆諸島まで来る」と予測ができて、実際に11月末に伊豆諸島に流れ着いたんです。
あらかじめ軽石の漂着が予測できていたことで、オイルフェンスを準備するなどして、漁業関係者が備えることができたと聞きました。

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自分の研究が誰かの役に立ったときの気持ちは…

田﨑:その周辺の方々にとっては、ものすごく助かる情報だったんですね。軽石については、日本全国からJAMSTECへ問い合わせがあったと伺っています。たくさんの方から感謝されたと思いますが、そういうときって研究者としてどのようにお感じになるものですか?

美山:最初は研究目的で始めたことなんですが、結果的に色々な方のお役に立つことができて……。やはり嬉しかったですね。

田﨑:研究者冥利に尽きるというか…。

美山:そうですね。海って、まだまだわからないことがたくさんあるので、我々研究者も日々新しい発見をしています。それをただ研究で終わらせるのではなく、予測して外部に発信することで、皆さんのお役に立てるということに非常にやりがいを感じています。毎日当たり前に情報として天気予報を見るように、海の情報についても、もっと気軽に皆さんにご活用いただけるようにしたいですね。

田﨑:私も今日お話を伺ったことで、シミュレーション研究の面白さと、海流と私たちの生活の密接さがよく実感できました。これからも美山さんやJAMSTECの方々の研究に期待して注目したいと思います。今日は本当にありがとうございました!

プロフィール写真

田﨑 さくら

フリーアナウンサー。1999年1月19日生まれ、東京都出身。青山学院大学文学部英米文学科卒。セント・フォース所属。
「お仕事search!それってグッジョブ」(テレビ東京)や「God Bless Saturday」(FMヨコハマ)に出演中。
海洋地球科学は私にとって未知の分野で、毎回勉強しながらの取材となりますが、皆様にわかりやすく伝わるレポートを心がけます!
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取材を終えて

お話を伺う前は、シミュレーションの難しい話が理解できるか不安もありましたが、中川さんも美山さんもとても丁寧に解説してくださったので、スーパーコンピュータや海流についてわかりやすく学ぶことができました。
ご自分の研究が誰かの役に立っているということを、まったく誇らずに淡々とお話しされる美山さん。大好きな温泉の話になると、優しいお顔がいっそう優しくなられたのが印象的でした。これからのますますのご活躍に期待したいと思います。

(構成:高村由佳 写真:松井雄希)

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