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北極域研究船は世界中の海で活躍する

研究プラットフォーム運用開発部門 北極域研究船推進室 招聘上席研究員 山口 一

北極域研究船の建造が2021年度に決まりました。2026年度に就航予定です。私は、海氷と船舶工学の専門家として、この船の構想段階から建造決定までほぼ5年、関わってきました。これからの5年は、いよいよ船として具体的な形にしてゆく過程に入り、改めて気を引き締めております。

日本の砕氷研究船としては南極観測船「しらせ」が有名です。しかし、「しらせ」は南極昭和基地に毎年1,000トン以上の荷物を運ばねばならないため、砕氷能力と輸送能力を重視した船になっています。そのため、観測能力は貧弱です。一方、これから造る北極域研究船は、海洋地球研究船「みらい」と同等以上の観測能力と砕氷能力を併せ持つ、日本初の本格的な砕氷観測船になります。

砕氷能力は平坦な氷の中を何ノットの船速で進めるかで表します。「しらせ」の砕氷能力は厚さ1.5mの平坦氷中を3ノット。一方、北極域研究船の砕氷能力はそれよりも低く、1.2mの平坦氷中を3ノットですが、エンジン出力は「しらせ」の約半分になっており、とても経済的な船です。そして、デュアルフューエル機関の一部採用や船体外板へのステンレスクラッド鋼の使用など、環境にも配慮した先進的な船になっています。

氷海航行支援システムの開発と搭載も、大きな特徴の一つです。これは、船の状態と周辺環境を同時にモニタリングし、記録しておくもので、安全かつ経済的な航路計画や観測計画に役立てるものです。記録したデータは航海終了後に取り出せますので、観測データ解析の際のベースデータにもなりますし、船のデジタル・ツイン構想への貢献にもなります。

この様に、北極域研究船の砕氷能力は世界1位どころか日本1位でさえありません。しかし、海氷の緩い時期には北極点まで行くことも可能ですし、北極海横断観測航海ができる能力があります。また、海氷の厳しい時期でも、北極海沿岸部での観測活動はできるでしょう。この北極域研究船は、世界中の海でほぼ季節の制約なく最先端の観測ができる画期的な船になると、確信しています。

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