最近の水温の状況(2020/8) 史上最高の水温、そして台風通過

最近の水温の状況

先月から今月にかけての日本周辺の海面の水温の状況を見てみます。

図1は、今年8月20日と9月17日の海面の水温の平年との差を見たものです[1]。平年より高い場所が赤っぽい色、低い場所では青っぽい色になっています。図2は、同じく8月20日と9月17日の、水深100mの図です。水深100mでも海面と同じ変化が見られれば、水温の平年との差が天気だけでなく海流の影響を受けている可能性が高くなります。

8月に入って暑い日が続き、海面では日本南方を中心に平年よりかなり水温が高くなりました(図1(a),G)。気象庁によれば、関東南東方、四国・東海沖、沖縄の東では、8月の平均海面水温が解析値のある1982年以降で最も高くなりました[2]

そのような状況の中、台風8,9,10号が沖縄から九州西方を通過しました。その影響で、台風が通過した西日本周辺では海面水温が平年より冷たくなりました(図1(b))。2020/9/9号「台風9号・10号による海面水温低下」や、JAXAの記事「地球が見える・衛星から台風通過時の海面水温低下を測る」参照してください。東日本の水温はまだ高く、この文章を書いている現時点で台風12号が近づいています。

一方で、海面下では8月から9月にかけて、それほど状況は変わっていません(図2)。海面では暖水におおわれてはっきりしませんが、黒潮南岸沖では黒潮大蛇行による冷水渦があり冷たくなっています(図2 A)。小蛇行の影響で四国の南岸でも水温が下がっています(黒潮予測参照)。一方で、大蛇行の東側では黒潮が北上して岸に近づくので、関東から東海沿岸では平年より水温が高くなっています(B)。

親潮周辺では(C)、「暖水渦は弱まる傾向はあるが、まだ海面は暖かい (親潮ウォッチ2020/9)」で解説したように、まだ暖水渦が存在するので平年より温度が高い所が見られます。黒潮続流が平年より北に位置しているために、海面でも海面下でも水温が高くなっています(E)。

日本海(F)では、海面下では平年より高いところと低いところが入り混じっているも状態です(図2)。

今後の日本周辺の水温については、「季節ウォッチ」も参考にしてください。

Fig1

図1: 海面の温度の平年との差(℃)。[上段]2020年8月20日。[下段] 2020年9月17日。

 

Fig2

図2: 水深100mの水温の平年との差(℃)。[上段]2020年8月20日。[下段] 2020年9月17日。

 

  1. [1]この記事では、今年の値はJCOPE2Mを使っています。平年の値はJCOPE2M再解析の1993~2018年の平均を使っています。JCOPE2M再解析データは学術研究利用では無償で公開しています。
  2. [2]臨時診断表 日本の南を中心に海面水温が過去最高を記録」(気象庁, 2020/9/1)