毎月、過去1カ月の予測を検証しています[1]。予測どおり大蛇行が続いていますが、予測よりも大蛇行の形がくびれてきています。 |
予測と実際(長期予測)
今回は2020年8月26日号の、8月20日から予測した9月25日までの結果を検証します。
8月26日号では黒潮大蛇行が続くと予測しました。その予測は当たっています。
図1左は、8月20日から予測した9月25日の黒潮の状態です。図1右は、観測値を取り入れて実際に近いと考えられる9月25日の状態です。図2は、同じく予測値(左)と実際(右)の比較を、8月20日から9月25日までのアニメーションにしたものです。
8月26日号の予測(図1左)は、実際(図1右)の黒潮大蛇行の特徴である、潮岬が継続して離岸している(C)こと、黒潮の最南下点が北緯 32 度より南に位置する(A)ことを予測できていました。
しかしながら、予測よりも実際は黒潮の蛇行は大きく、形がくびれてきています。予測ではこれから渦がちぎれるかも知れないと予測しており、注目されます。
黒潮が八丈島の北を流れる流路が継続すると予測していました(図1左B)。その予測は当たっています(図1右)[2]。
四国の室戸岬でも足摺岬でも大きな離岸が続くことも予測できていました。
図2: 2020年8月20日から9月25日までの予測(左)と実際(右)の比較のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
黒潮大蛇行を作る渦の強さ(長期予測)
大蛇行を作る渦の強さを数値化するために、2018/3/14号「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」で、深層の冷水面積(水深1000mの水温3℃以下の海域の面積)を渦の強さの指標として導入しました。長期予測モデルJCOPE2Mをアップデートし、指標を水温3.3℃以下に変更しています。
図3の点線は、2020年8月26日号の8月20日からの予測による1か月の冷水面積の変化です。変動に差があるものの、弱い状態が続くということが予測できていました。
黒潮大蛇行が2017年8月に始まってから約3年2か月[3]になっており、記録が確かな1960年代後半以降では、史上最長の1975-1980年(約4年8か月)に次ぐ長さになっています(「黒潮大蛇行の歴史」参照)。
- [1]2017/7/12号「黒潮流路はどれくらい先まで予測できるのか」でも解説しているように、1ヶ月はある程度の精度をもって予測できる限界に近い長さです。毎月の検証では、限界に挑戦するため1ヶ月先の予測の検証をしています。仮に検証で1ヶ月先の予測が当たっていない部分があっても、たとえば1週間先の予測が外れ続けたという意味ではないことにご注意ください。↩
- [2]東京大学大気海洋研究所の「潮位データを用いた黒潮モニタリング」のグラフで見ると、潮位が高い状態が続いており、黒潮が八丈島の北を流れる流路を示唆しています。八丈島の潮位については、「黒潮が八丈島の南を流れているのをどうやって観測で確認するの?」で解説しています。八丈島の潮位の持つ意味は、解説「黒潮大蛇行が終わる時: 2005年の場合」でもとりあげています。↩
- [3]2017年8月も1か月に加えて数えてます。気象庁に合わせた数え方です。↩