台風の通ってきた海

台風3兄弟

今月の上旬には台風9号、10号、11号と、台風が3つ発生していました。梅雨時に3つ以上の台風が同時に存在するのは、2002年以来13年ぶりです。気象衛星ひまわり8号が7月7日に運用を開始した時と重なり、報道で見た方も多かったのではないでしょうか(※1)。台風が通ってきた日本南方の海がどうなっていたかを見てみましょう。

図1上段は、JCOPE2による7月7日の海面水温(色, ºC)の推定値(観測を取り入れて現実に近いと考えられる値)と、3つの台風の位置(★)です(※2)。日本の南方には30ºC以上の高い海面温度が広がっていました。これは平年の海面水温(図1下段)よりも高く、台風の発達に良い条件だったと言えます。

Fig1

図1: [上段] JCOPE2による7月7日の海面水温(ºC)と、7月7日21時(日本時間)の台風位置(★)。[下段] JCOPE2による7月7日の海面水温の平年値(1993-2012年平均)(ºC)。

台風が通った後は?

図2は、3つの台風が通った後の7月17日の海面水温(ºC)です。台風通過前に比べると、海面温度が低下しており、特に、台風11号の通った跡が、はっきりと残っています。これは台風の風が非常に強いために、海面下にある冷たい水がひっぱり上げられたからです(※3)。(後の図3で見るように、他の台風でも海面温度は低下していますが、その後の日射で回復しており、7月17日になると跡があまり残っていません。)

台風の通過とともに海面温度が低くなる様子をアニメーションにしてみました(図3)。ここでは、通常、予測に使っているJCOPE2ではなく、JCOPE-Tという超高分解能のモデルを使っています(※4)。JCOPE-Tのデータは一時間毎にデータがあるので、詳細な時間の変化を見ることができます。

Fig2

図2: JCOPE2による7月17日の海面水温(色)と、図1以後の台風の経路(太線)。

 


図3: 台風の9号,10号,11号の経路と海面水温のアニメーション。7月6日午前9時から7月18日午前8時(日本時間)。色がJCOPE-Tによる海面水温(ºC)の推定値。★印が台風の位置。線がそれまでの台風の経路。クリックして操作して下さい。途中で停止することもできます。

次なる台風

今週末は、次の台風12号が日本に近づいています。図4は台風12号のこれまでの経路(太線)と7月23日21時(日本時間)時点の台風の位置と、JCOPEで計算した7月23日の海面水温です。強い台風ですので、最新の情報を入手し、くれぐれもお気をつけください。

Fig4

図3: JCOPE2による7月23日の海面水温(色, ºC)と、台風12号の経路(太線)と7月23日21時(日本時間)時点の中心位置(★)。

参考

アプリケーションラボの相木秀則・主任研究員は、数値モデルを用いた台風と海の関係の研究を行っています。
参照: 気候系のhot spot 「非静力大気海洋結合モデルを用いた台風等の数値的研究」

追記 2015/8/12放送のフジテレビ「とくダネ!」で、図3を、台風の通過にともなって海水温が低下するのをとらえた映像として使っていただきました。

※1  参考: 「次期気象衛星がとらえた3つの台風」tenki.jp(日本気象協会)

※2 本記事の台風位置と経路の推定値(気象庁ベストトラックデータ)は国立情報学研究所の「デジタル台風」ら入手しています。

※3 台風が海面温度を低下させる原因は、強い風による蒸発、海面のかき混ぜなどがありますが、海面下の冷たい水を引っ張り上げる効果がもっとも重要だとされています。
参考:気象庁「台風による水温低下」

※4 JCOPE-Tのデータは2015年3月13日号の解説「JAMSTECが渦について新発見をしたと聞いたけど?」でも使用しています。
JCOPE-Tに関する文献:
Varlamov, S. M., X. Guo, T. Miyama, K. Ichikawa, T. Waseda, and Y. Miyazawa, 2015: M2baroclinic tide variability modulated by the ocean circulation south of Japan. Journal of Geophysical Research: Oceans, 120, 3681-3710. doi:10.1002/2015jc010739

 


美山 透

海の変化は、漁業海運エネルギー天候など様々なことに影響します。海洋予測がもっと身近なものになるように、頭をしぼって書いています。