「ちきゅう」のための海流予測 (10) 4月18日現在の見通し

ちきゅう」は4月16日(※1)に再び掘削地点に戻り作業をしています(参考図1)。今回は4月18日付けの最新の海流予測を見てみましょう。

まず、気象衛星「ひまわり8号」(※2)の海面水温観測から、黒潮の状態を見てみます。図1で温度の高い帯として見えているのが黒潮です。黒潮の流れは、岸に近づく接岸傾向(赤矢印)と岸から遠ざかる離岸傾向(青矢印)により波打っています(4月15日号の予測も参照)。現在は、掘削地点に接岸傾向(図1の②)が近く、黒潮が近づいて、流速が大きめだと考えられます。しだいにこの接岸傾向は下流に流れ、離岸傾向(図1の③)が近づき、流速が小さくなると予想されます。

図1

図1:「ひまわり8号」が観測した2016年4月18日の海面水温(°C)。JAXA提供の1時間データを合成した。白の空白は雲がかかって観測できなかった所。赤星()が「ちきゅう」の掘削地点。

 

以上を念頭に、特別サイトで見ることのできるアンサンブル予測KFSJによる「ちきゅう」掘削地点での海面(深さ0m)での流速(青線)と流れの向き(緑線)の最新の予測を見てみましょう(図2)。20のアンサンブルメンバーで計算しているので、予測結果の線が20本づつあります。

ほとんどの予測で、4月14日から16日頃が流速のピークだと予測しています。その後、流速が次第に減少すると予測しています。これは、上で説明した、黒潮の接岸傾向と離岸傾向を反映したものです。

図2: KFSJによる4月8日からの予測。青線は海面(深さ0m)での流速(単位はノット。2ノットは約1メートル毎秒)。緑線は流れの向き(北向きが0度, 東向きが90度)。

 

図3は、図2の流速予測を4月8日から4月25日まで抜き出し、20本の予測の平均(赤線)・最大最小の幅(青く塗った範囲)にまとめ直した図です。さらに、「ちきゅう」、支援船「あかつき」、警戒船「平成丸」が掘削地点に近づいた時(※3)に観測した流速の値を重ねました。青丸が「ちきゅう」、緑丸が「あかつき」、黒丸が「平成丸」の観測値です。

予測モデルでは、観測で見られる4月13日以前は流速が小さめだと予測はしていましたが、観測ほどの流速低下を再現できませんでした。これは図1では下流に移動している離岸傾向①による黒潮南下にともなう流速低下をうまく表現出来なかったと考えられます。

その後、4月16日に向けて流速が増大していく様子は、観測との一致が良くなっています。4月17日以降、予測されているように流速が次第に小さくなっていくかが注目されます。

なお、今回のアンサンブル予測KFSJでは一日平均の予測しか提供していませんが、観測で見られるように一日の中でも流速は大きく変化することがあり、「ちきゅう」はそれにも備える必要があります。4月14日に見られた流速変化については連載第9回で解説しました。

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図3: 掘削地点での観測と予測。赤線は図2の20本の流速予測の平均(アンサンブル平均)。青く塗った範囲は、アンサンブルメンバーの最大・最小がおさまる範囲。青点は「ちきゅう」が掘削地点で観測した流速。緑点・黒点はは同じく「あかつき」「平成丸」による観測。

 

※1
本稿では、予測モデルで使用している時刻にあわせて世界標準時を使用します。世界標準時と日本標準時は9時間の時差があるので、本稿での4月14日は、日本標準時の4月16日午前9時から4月17日午前9時になります。

※2
「ひまわり8号」の海面水温については、2015/10/9号・気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮を参照。
過去の「ひまわり8号」の水温データを使った解説一覧はこちら

※3
予測モデルが約3kmの分解能をもつことを考慮して、掘削地点から1.5km以内に近づいた時の観測を全て使用しています。この範囲を多少変えても、結果はほとんど変わりません。

 


参考:1日毎の船の航路と海面水温(4月16-17日)

以下の図の左側は、4月16日から17日の1日毎の「ちきゅう」・支援船「あかつき」の航路と気象衛星「ひまわり8号」の海面水温分布(色)です。右側は観測された流速と緯度の関係です。

「ちきゅう」は16日に再び、黒潮外の低流速域から、掘削地点へ移動しています。図右側の流速の緯度の関係から、16・17日とも、黒潮の流速のピークは掘削地点の緯度近くにあるようです。

FigS1

参考図1: 左は「ちきゅう」(青線)「あかつき」(緑線)の航路。背景の色は「ひまわり8号」による海面水温。空白は雲のため「ひまわり8号」が観測できない地点。赤星()が掘削地点(「ちきゅう」の最終地点に隠れている)。 右は船の緯度位置と流速の関係。右左図とも点線が掘削地点の緯度。 ●が1日の最初の地点で▲が一日の最終地点。4月16日。「ちきゅう」は掘削地点へ移動。

 

参考図2:

参考図2: 同じく4月17日。「ちきゅう」は掘削地点で一日作業中です。

 


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「ちきゅう」のための海流予測の連載記事一覧はこちら
この連載では、流れの速さの単位として船舶でよく使われるノット(2ノットは約1メートル毎秒)を使用します。
「ちきゅう」のための海流予測KFSJの特別サイトはhttp://www.jamstec.go.jp/jcope/kfsj/です。KFSJついては連載第2回で紹介しました。
「ちきゅう」の観測の様子に関しては「ちきゅう」公式twitterを参照