気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮

7月7日に運用を開始した気象衛星「ひまわり8号」は、従来のひまわりに比べて水平分解能の倍増、可視カラー画像化、高頻度の観測(※1)が可能などの強化がなされた人工衛星です。加えて、「ひまわり8号」は、雲がかかっていない場所では、海水面温度も観測することができます。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、「ひまわり8号」から空間分解能2km10分毎の海面水温データを作成し、JAXAひまわりモニタのサイトで公開しています(※2)。従来の人工衛星による海面水温データは、人工衛星が通りかかった時のスナップショット(例:5月8日号解説の図1下段)か、それらを集めて一日平均したデータぐらいしかなかったので、晴れ間限定とはいえ、10分毎のデータが広い範囲で得られるのは画期的です。ここでは、JAXAひまわりモニタのサイトからデータを入手して(※3)、黒潮域を見てみました。

図1は、「ひまわり8号」の海面水温データから、黒潮域で比較的晴れ間の広がっていた今年9月12日20時50分(日本時間)からの10分平均の値を図示したものです(※4)。9月18日号の図1にあたるJCOPEによる9月12日現状分析(図2)と比較すると、JCOPEは「ひまわり8号」の観測の特徴を良くとらえてますが、JCOPE(分解能約9km)より「ひまわり8号」(分解能約2km)の方が分解能が高いため、「ひまわり8号」の方が細かい温度分布が見えているようです。

図3は、図1の★の位置での、10分毎の「ひまわり8号」で観測した、9月12日の1日の海面水温時間変化です。日射を受けて昼から昼過ぎに温度がピークになる日変化をとらえることができています。

図4は、図1の赤四角枠での海面温度のアニメーションです。九州東岸と四国の南岸で、黒潮による暖かい水(黄色っぽい色)が渦をまいている様子が見られます。「ひまわり8号」の時間的に高頻度のデータにより、急潮(※5)などの短い時間的に発達する現象の研究が進むことが期待されます。

図1:

図1: 「ひまわり8号」で観測した海面水温。時刻は2015年9月12日20時50分(日本時間)からの10分平均。色が海面水温(°C)。白は雲により観測できない場所。

 

Fig2

図2: 9月18日号図1にあたるJCOPEによる9月12日現状分析。ただし、海面高度を海面水温に置き換えた。JCOPEのデータは9月12日午前9時から13日午前9時(日本時間)までの一日平均。

 

 

Fig3

図3: 図1の★点(132°E,32°N)での10分毎の「ひまわり8号」で観測した海面水温時間変化。時刻は2015年9月12日0時(日本時間)から24時間。

 

図4: 「ひまわり8号」で観測した海面水温のアニメーション。場所は図1の赤四角で囲った領域。時刻は2015年9月12日0時(日本時間)から10分毎に24時間。色が海面水温(°C)。白は雲により観測できない場所。図の上の数字で時刻を表示。


 

※1 日本周辺では2.5分間隔の雲画像を、気象庁情報通信研究機構のサイトで見ることができます。

※2 JAXA EORC JAXAひまわりモニタの公開について (2015/9/1)

※3 本稿にて使用したひまわり8号から作成した海面水温プロダクトは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の分野横断型プロダクト提供サービス(P-Tree)より提供を受けました。

※4 オリジナルのデータはノイズが含まれているようなので、5×5のサイズのメディアン・フィルターを適用してなめらかな図にしています。

※5 急潮については、5月8日号9月18日号の解説で触れています。