沖縄トラフ熱水活動域「ちきゅう」掘削孔を利用した潜航調査計画 in NT10-17

航海レポート

2010年9月17日

火を噴くドラゴン

川口 慎介(JAMSTEC・プレカンブリアンエコシステムラボ)

9/17は伊是名海穴にあるHAKUREI熱水サイトで潜航調査を行いました。HAKUREIサイトとJADEサイトはわずか2kmほどの距離にあり、熱水の基本的な化学的性質は類似していることが、これまでにわかっています。一方で、たとえば熱水に溶けているガスの組成などは大きく違うこともわかっています。わかりやすくいえば、二卵性双生児のような関係でしょうか。違うか。とにかく、HAKUREIとJADEの熱水組成がなぜ非常に類似しているのか、なぜ一部の組成では異なるのか、そのプロセスの解明が今回の潜航のターゲットでした。


伊是名海穴HAKUREIサイトのドラゴンチムニー(ハイパードルフィンが撮影)

HAKUREIサイトでもっとも勢いよく熱水を噴出しているのがドラゴンチムニーです。ドラゴンチムニーは、まさにドラゴンといった佇まいをしていて、角や口からはシュコーっと勢いよく熱水を噴き出しつつ、さらに体全体からもオーラのようにモワモワと熱水を放出しています。その姿は本当にかっこいいのですが、オーラ出し過ぎ状態のせいで、近づくとハイパードルフィンが熱水で火傷を負ってしまう危険性があります。このため、ドラゴンチムニーは見学だけにして、実際の熱水採取はドラゴンから100m離れたところにある別のチムニーで行いました。

「考えるな、感じろ」
映画「燃えよドラゴン」でのブルース・リーの言葉です。潜航調査では事前の綿密な計画も重要ですが、限られた潜航時間内で何をすべきか、というとっさの判断も求められます。研究者というと、部屋に籠もって考えてばっかり、というイメージがあるかもしれませんが、意外と直感を頼りに研究を進めているものです。そして、へたな考えを巡らした時よりも、直感頼りの時の方が良い結果に結びつくことが多い気がしています。