美山 透
海洋・大気環境変動予測応用グループ 主任研究員
7月30日に標記の報道がありました。
漂着した残がいは、2014年3月にインド洋の東側で消息を断ったマレーシア航空機の可能性が高いとされています。これまで、マレーシア航空機が墜落した可能性が高いのはインド洋の東側とされてきました。仮に、この墜落場所が推定通りだとして、インド洋の西側のレユニオン島に流れ着くことが可能なのかを考えました。
アプリケーションラボ(APL)では、地球規模の海流を計算することができるJCOPE-FGOという海洋モデルの研究開発を行っています。JCOPE-FGOは観測値を取り込むことで、現実に近い海流を再現すると共に、2週間先までの予測を行うことができます。
図1はこのJCOPE-FGOから南インド洋の様子を、マレーシア航空機が消息を断った2014年3月8日から2015年7月29日まで平均してしめしたものです。実際には季節変化や渦などの複雑な要素がありますが、平均して見れば南インド洋には反時計回りの表層の流れ(*1)が存在しており、この循環で流されたとすれば、墜落したと推定される領域から、レユニオン島に流されることは十分考えられます(*2)。
APLでは、同じコンピュータプログラムを用いて、日本近海の海流(黒潮・親潮)の流れの予測と解説を行っています(黒潮親潮ウォッチ)。
図1: JCOPE-FGOで計算した南インド洋の海面近くの海洋循環の様子。観測を取り入れることで現実に近いと考えられる推測値。矢印は流れの向きと強さを表す(単位はメートル毎秒)。色は海面高度(単位はメートル、色が赤いほど高い)で、海流を生む水圧の指標。