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アプリケーションラボ(APL)

気候変動予測情報創生グループ

本グループでは、3ヶ月先、半年先、1年先の気候の予測を実験的に行うとともに、その予測情報を応用するための研究を進めています。

太平洋熱帯域で生じるエルニーニョ現象や、インド洋熱帯域で生じるインド洋ダイポールモード現象といった、海洋と大気の変動が密接に絡み合って生じる海洋性気候変動は、主に大気を通じて世界各地の気候に影響を及ぼします。本グループではこれまでに、これらの現象の発生機構に関する研究を進めるとともに、それらの変動をシミュレートする大気海洋結合モデルをEUとの協力の下で開発しました。観測データからこのモデルに現在の海洋・大気の状態を与え、その後の海洋・大気の変動をシミュレートすることで、例えば1年先のエルニーニョ現象の発生をかなりの高精度で予測することが可能になってきています。

本グループではこのような予測を試験的に実行し、精度を確認するとともに、精度向上、またより広い地域での予測実現のために気候変動の素過程の研究を進めています。エルニーニョ現象のような熱帯域の現象に加え、沿岸ニーニョと呼ばれる大洋の東岸で生じるエルニーニョ現象に似た現象、また、日本の東方など中緯度域で生じる海洋と大気の相互作用など、予測に影響を及ぼす気候変動の理解を深めることを通じて、より多くの地域でより精度の高い気候予測の実現を目指した研究を行っています。

一方で、このような気候予測情報をわかりやすいように発信する方法の開発を進め、また、その予測情報を応用する研究も進めています。日本など中緯度域の気候変動の予測においては、多数の予測を繰り返し行うアンサンブル手法が重要になります。この大量のアンサンブル予測情報を活かした情報発信方法の開発も進めています。これらの予測情報を社会応用するため、環境研究総合推進費によるプロジェクトを中心に海洋性気候変動が穀物等農作物の収量に及ぼす影響を明らかにするとともに、長崎大学熱帯医学研究所との共同研究で南アフリカにおける感染症の早期警戒を実現するための研究を進めています。

試験的な季節予測の実施とその精度の検証を行うとともに、予測情報の社会的な応用を進めることで、社会に必要とされる予測内容、予測精度に関するフィードバックを得ることが可能となります。それを基に更に社会に役立つ予測の実現に向けて研究を進めています。


季節予測(SINTEX-F)

2017年4月3日
野中 正見
気候変動予測情報創生グループ グループリーダー