毎月の月末は、過去1カ月の予測を検証する予定です。今回は2017年3月29日号の、3月24日から4月21日までの予測を検証します。
図1上段は、3月24日から予測した4月21日の黒潮の状態です。3月29日号の予測のポイントの一つは、黒潮が八丈島の南を流れる離岸流路が続くということでした。予測していたとおり、離岸流路が続いています(図1下段)。
3月29日号の予測のもう一つのポイントは、九州東に大きめの離岸(小蛇行)が黒潮下流に移動する可能性があるということでした(図1上段)。小蛇行は確かに少しずつ移動していますが(今週号の現状参照)、実際(図1下段)よりもやや早過ぎたようです。JCOPE2Mは、黒潮の変化の予測が全体的に早過ぎる傾向があるかもしれません。今後の検証の注目点です。
2017年4月21日頃の実際の様子については、図2の「ひまわり8号」による海面水温[1]も参照してください(4月21日は雲が多かったので、4月22日の画像をしめしています)。八丈島の周りの水温は低く、黒潮が離岸流路にあることをしめしています。九州南東では小蛇行による大きな離岸のために、その岸側で冷たい水温が見られています。「ひまわり」の画像は、接岸傾向sによる暖水の進入(今週号の現状参照)もとらえています。
図3は2017年3月24日から4月21日までの予測値(上段)と実際(下段)の比較をアニメーションにしたものです。
図3: 2017年3月24日から4月21日までの予測(上段)と実際(下段)の比較のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
八丈島付近の黒潮流路について、詳しく見てみましょう。過去の解説で[2]、伊豆諸島付近の黒潮流路を判断するには、八丈島での海面高度(潮位)を見れば良いことを説明しました。流れの強い黒潮をはさんで、本州に近い方は海面高度が低い、逆の沖側では海面高度が高いという関係があるからです(図1参照)。このため、黒潮が本州に近づいて島の北を流れる接岸流路であれば、島周辺の海面高度は高くなります。逆に、黒潮が島の南を流れる離岸流路が発達すれば、島周辺の海面高度は低くなります。
図4は、JCOPE2Mで観測値を取り入れて再現した八丈島の海面高度(★による点線)と、その予測(青線、赤線)です。実際の海面高度の変化(★による点線)を3月29日号の3月24日からの予測(青線)と比較すると、予測通り離岸流路の状況(海面高度が低いまま)が続いています。離岸の規模は、予測(青線)より実際(★による点線)の方が大きく(海面高度は低く)なっています。
今週号の予測(赤線)では、大きな離岸流路がしばらく続く(海面高度がかなり低い値が続く)と予測しています。
- [1]ひまわり8号」の海面水温については、2015/10/9号・気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮を参照。JAXA提供の「ひまわり8号」海面水温データは、2016年8月31日からバージョン1.2にバージョンアップしています。鹿児島県水産技術開発センターや和歌山水産試験場からも「ひまわり」の画像が公開されています。過去の「ひまわり8号」の水温データを使った解説一覧はこちら。↩
- [2]過去の八丈島水位の解説一覧はこちら。↩