2018年4月20日から5月24日の予測を検証します

毎月、過去1カ月の予測を検証する予定です[1]。今回は4月25日号の、4月20日から予測した5月24日までの結果を検証します。

予測と実際

4月25日号では黒潮大蛇行が続くと予測しました。その予測は当たっています。

図1上段は、4月20日から予測した5月24日の黒潮の状態です。図1下段は、観測値を取り入れて実際に近いと考えられる5月24日の状態です。図2は、同じく予測値(上段)と実際(下段)の比較を、4月20日から5月24日までのアニメーションにしたものです。

5月24日の予測(図1上段)は、実際(図1下段)の黒潮大蛇行の特徴である、潮岬が継続して離岸していること、黒潮の最南下点が北緯 32 度より南に位置することを予測できていました。黒潮の少なくとも一部が八丈島の南から東に通過する時期があると予測しており、実際その通りでした(図2)。ただし、その時期は異なっていました(図1)。黒潮の蛇行の行方については、毎週の黒潮予測記事でも、気象衛星「ひまわり8号」が観測する海面水温などと比較しながら検証しています。

4月25日号では、四国・室戸岬と足摺岬の離岸と接岸の変化が大きくなってくると予測していました(図1)。足摺岬は実際に接岸から離岸になりました(図1,2)。室戸岬の接岸は過大評価でした。

大蛇行を作っている反時計回り渦は予測よりも強さを保っています。図1の反時計回りの渦の中心の海面高度の予測(図1上段)が、実際(図1下段)よりも低い(青い)ことからわかります。

予測と実際で、違っていた所と合っていたところは、図2のアニメーションでもご確認ください。

Fig1

図1: [上段]4月20日から予測した5月24日の予測値。[下段]観測値を取り入れて推測した2018年5月24日の解析値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。赤は八丈島の位置。

 


図2: 4月20日から5月24日までの予測(上段)と実際(下段)の比較のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

黒潮大蛇行を作る渦の強さ

大蛇行を作る渦の強さを数値化するために、2014/3/14号「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」で、深層の冷水面積(水深1000mの水温3℃以下の海域の面積)を渦の強さの指標として導入しました。

図3の点線は、4月25日号の予測による冷水面積の変化です。下降を予測していました(黒点線)。しかし実際には(黒線)、横ばいからやや上昇になっています。上でも説明した通り、大蛇行を作っている反時計回り渦は予測よりも強さを保っています。

 

Fig3

図3: JCOPE2Mで推定と予測した冷水面積(水深1000mの水温3℃以下の海域の面積)の1日毎の時系列で黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標。単位は104平方キロメートル。黒線は観測を取り入れつつ推定した実際の値(解析値)。点線が4月20日から5月24日までの予測。参考のために前回の大蛇行が終了した2005年の時の時間変化を薄い線で重ねた。

 

  1. [1]2017/7/12号「黒潮流路はどれくらい先まで予測できるのか」でも解説しているように、1ヶ月はある程度の精度をもって予測できる限界に近い長さです。毎月の検証では、限界に挑戦するため1ヶ月先の予測の検証をしています。仮に検証で1ヶ月先の予測が当たっていない部分があっても、たとえば1週間先の予測が外れ続けたという意味ではないことにご注意ください。