海の生物多様性とは
生物多様性とは、生き物たちの豊かな
「つながり」が存在すること。
このつながりに欠かせないのが
「種の多様性」「生態系の多様性」「遺伝子の多様性」です。
これら3つのいずれが欠けても、
生物多様性を維持することはできません。
種の多様性
「種の多様性」 とは、 さまざまな種類の生き物が存在すること。生き物たちは食べる・食べられる関係だけでなく、 一緒に暮らしたり、暮らす場所を分け合ったり、みんながつながっています。どんな種類の生き物も欠けることなく存在することが、このつながりを維持するために大切なことです。
生態系の多様性
海には、浅海のサンゴ礁や深海の化学合成生態系など、さまざまなタイプの生態系が存在します。また、それぞれの生態系には、その環境に適応した生き物たちがくらしています。一見異なる個々の生態系も、地球という大きく複雑なシステムの中で互いにつながっています。
遺伝子の多様性
「遺伝子の多様性」は、同じ種類の生物でも、それぞれが個性を持っているということです。地球の環境はこれまでも、そしてこれからもずっと変わり続けていきます。異なる個性(遺伝子)を持つ仲間がいることで、生き物たちは生き残っていくことができます。
みんなで考えてみよう!
生物多様性の「3つの多様性」について、動画で学ぼう
生き物同士の「つながり」のひとつ、「共生」について詳しく学ぼう
深海の特徴的な生態系「化学合成生態系」について、動画で学ぼう
海の生物多様性、なぜ大事なの?
わたしたちはそれと気付かずに、生物多様性がもたらす
さまざまな恩恵を受けて暮らしています。
このような、人間が生態系や自然から受けている恩恵を
「生態系サービス」といいます。
わたしたちの周りには、どのような生態系サービスがあるでしょうか?
みんなで考えてみよう!
「生態系サービス」について動画で学ぼう
最近食べたもの、出かけた場所、見慣れた風景、みんなの身近な生活の中に隠れた生態系サービスを探してみよう!
無くなりつつある、変わりつつある生態系サービスはないか、考えてみよう。
海の生物多様性に迫る危機
現在の地球には、
海の生物多様性に影響を与えるさまざまな環境問題が顕在化しています。
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詳しい情報を見ることができます
海の大部分を占める「深海」も、固有の生物や生態系による豊かな生物多様性を有しています。今、この深海の生物多様性にも危機が迫っています。
大量に海へ流れ込むプラごみの汚染は深海にまで広がっています。プラごみは、生き物がまちがって食べるだけでなく、有害な化学物質を運ぶことで生き物に影響を与えています。
地球温暖化は海水温を上昇させるだけでなく、氷床や氷河など陸上の氷をとかして大量の真水を海へ流れこませて、生き物がくらす海の環境を大きく変えてしまいます。
地球温暖化により海面が上昇することで、さまざまな生き物がくらす場所である海岸の多くが、その姿を消しています。
人間の出す大量の二酸化炭素が海に溶け込み、海は酸性化しています。このような海では、炭酸カルシウムの殻や骨を持つサンゴやプランクトンは、生きていくことがむずかしくなります。
海に溶けこむ酸素の量は、水温が上がると少なくなります。地球温暖化による海水温の上昇で、生き物たちがくらしにくい、酸素の少ない海が増えつつあります。
人間が無計画に生き物を獲ることで、特定の生き物の数が大きく減り、生態系のバランスをくずしています。
本来、そこにはいないはずの生き物がやってくると、生態系のバランスをくずしてしまいます。海を行き交う船や漂流するごみが、外来種を運ぶ原因となっています。
開発や農業でむき出しの地面に雨が降ると、大量の土砂が海へ流れこんで濁らせます。このような濁った海はサンゴの生育に必要な太陽光をさえぎるなどして成長を妨げます。
みんなで考えてみよう!
海の生物多様性に迫る危機について動画で学ぼう
身近な海に迫っている危機にはどんなものがあるか、考えてみよう。
海の生物多様性に迫る危機が、わたしたちの暮らしや身近な海の姿をどのように変えてしまうか、予想しよう。
海の生物多様性の利用と保全に必要なこと
わたしたち人間は、海の生き物たちと
上手に付き合うことができているでしょうか?
さまざまなデータを集めて、海の生物多様性の姿を
明らかにすることで
その答えがみえてきます。
海の生物多様性の”今の姿”を明らかにするためには?
海の生物多様性の状態を調べるためには、いつ・どこに・どのような生き物がいたのかを知る必要があります。これにより、過去から現在に至る生物多様性の変化も理解することができます。
ローカル/グローバル、両方の視点でデータを集める
広い海全体で生物多様性の姿を明らかにするためには、グローバルな視点で海全体のデータを集めるだけでなく、サンゴ礁や深海の化学合成生態系など、ローカルな視点で固有の生態系のデータも集める必要があります。そのためには、研究者だけでなく市民も参加する広範なデータ収集のしくみ作りや、このような調査に必要な新しい技術開発が必要です。
海の生物多様性の、未来の姿を予測する
仮想空間上に現実同様の地球を再現する新技術「デジタルツイン」の開発など、たくさんのデータと情報技術を組み合わせることで、海の生物多様性の未来の姿を予測(シミュレーション)し、生物多様性を守る効果的な方法を考え出すことができます。
みんなで考えてみよう!
海の生物多様性の変化を記録するためには、どんなデータを集めればいいでしょうか?
このデータの中に、わたしたちでも集めることができるものがないか考えてみよう。
海の生物多様性の姿を理解する
-GODACの取り組み-
GODACは海洋生物の情報を
集積・発信するデータベースの整備を通して
海の生物多様性を取り巻く諸課題の解決や
保全に必要な情報を提供しています。
OBIS -Ocean Biodiversity Information System-
国連のユネスコ傘下であるIODE(国際海洋データ・情報交換システム)が主導する、世界最大規模の海洋生物地理情報データベースです。世界中の研究者から海洋生物の分類や出現情報等のデータを集めて、海の生物多様性の姿を地球規模で把握できる情報を提供しています。
J-OBIS -Japan Ocean Biodiversity Information System Center-
OBISの中で、日本周辺の海洋生物情報収集を担っているのがJ-OBIS(日本海洋生物多様性情報連携センター)です。研究機関や研究者、NGO等から提供されるデータをOBISに登録するための品質管理などを行っており、GODACがその事務局を担っています。
BISMaL -Biological Information System for Marine Life-
海洋生物の「分類情報」や「出現情報」が集められた、GODACが発信する海の生物多様性データベースです。出現情報には、 生物が確認された海域の深度や海水温、生物の映像・画像データなど、さまざまな情報も登録されています。検索機能も充実しており、生物の名前から出現情報を調べたり、特定の海域や深度に暮らす生物を調べることができます。
みんなで考えてみよう!
海の生物多様性を守るJAMSTECの取り組みについて、動画で学ぼう
身近な海にはどのような生物が暮らしているのか、データベースを使って調べてみよう。
このようなデータベースは、どんなことに役立つか、活用方法を考えてみよう。
海の生物多様性に関する諸課題の解決へ向けて
-GODACの取り組み-
危機的な状況にある海の生物多様性を保全し、
回復させるために有効的と考えられているのが
漁業や開発等の人間活動を制限する
「海洋保護区」の設定と管理です。
日本の海洋保護区の決定には、BISMaL/J-OBISの
海洋生物データが大きく貢献しています。
日本の海洋保護区
日本を囲む広大な海は、人間の生活圏と隣接した沿岸域だけでなく、沖合の表層域、さらには深海を含む沖合海底域と、 さまざまな姿を持ち合わせています。このような海洋環境を有する日本で海洋保護区を選定する際に、日本周辺海域の多くの海洋生物データを発信しているBISMaLが重要な役割を担いました。
保全海域の拡大や管理のために
法律や条例で決められた保護区がある一方、わたしたちの周りには生活や文化等、社会の営みの中で大切にされてきた場所があります。おのずと人と自然が共生することで生物多様性が保全されているこのような場所をOECM(保護地域以外で生物多様性保全に資する地域)といいます。わたしたちが海と上手に付き合ってきた場所 ・ OECM には、海の生物多様性を保全していくための大切なヒントがたくさん隠れています。
みんなで考えてみよう!
わたしたちの日々のくらしや地域に、海と関係した文化や営みがないか調べてみよう。
昔と今、わたしたちの海との付き合い方はどのように変わったのか、みんなで考えてみよう。
海の生物多様性のこれから
海の生物とわたしたちが共存できる海をつくるために
かけがえのない海の生物多様性をこの先もずっと残していくために
わたしたち一人ひとりにできることは何か、考えてみよう。
みんなで考えてみよう!
理想的な「わたしたちと海の生物多様性の関係」を考えてみよう。
理想的な海を目指すJAMSTECの取り組みについて動画で学ぼう