北極海洋環境研究グループ
Arctic Ocean Environment Research Group
北極の海洋環境を調査し、将来変化の可能性を探る。
北極の海は少し前まで、海水が凍ってできた海氷(かいひょう)がほぼ一年中フタの役割を担っていたため、動きが少ない“静かな海” でした。しかしいま温暖化によって氷が減り、海と大気との仕切りがなくなり、風や日射が海に直接影響を及ぼすようになってきました。北極の海が活発に動き始めています。海氷がとけることで、海の温暖化・淡水化・酸性化も進み、環境が大きく変わりつつあります。
そのような環境変化は海だけではありません。北極の周辺地域では以前よりも早くから雪が降るようになってきました。夏にあたたまった陸地が冷える前に雪が陸上を覆ってしまうと、雪が「断熱材」の役割をして、永久凍土と呼ばれる凍てついた大地がとけやすくなっていると考えられます。この陸域の変化も蒸発や河川を介して、やがて海洋に影響します。
このように北極域ではいま急激な変化が起きています。しかし、何がどれだけ変化しているのか?その要因は何なのか?今後どうなっていくのか?についてはまだわかっていないことがたくさんあります。そこで北極海とその周辺環境の「Status(実態)」と「Trend(変化の速さや方向性)」を明らかにし、北極の変化が地球全体の気候システムに与える影響を評価するための土台をつくることが、私たち「北極海洋環境研究グループ」の目的です。
私たちは海洋地球研究船「みらい」で1998~2025年の28年間で23回の北極航海を実施し、水温・塩分・海流・大気の測定や、海水・堆積物の試料採取などを行ってきました。また海底に係留系と呼ばれる観測システムを設置して、冬に海氷で覆われる海の中でも一年を通した観測データを集めています。さらに陸上でも地中の温度や河川の成分などを調べています。さらに「地球シミュレータ」を用いた数値シミュレーションを行って、北極海でいま起きていることやそのメカニズムを包括的に理解する取り組みを続けています。2027年からは北極域研究船「みらいII」も最大限に活用しながら、これまで観測データの空白域であった中央北極海にも研究対象を拡大していきます。こうして得られる新たなデータや科学的知見から、北極の現状と将来像がもっと明らかになっていくことを期待してください。