
セミナーのお知らせ
[北極海洋環境セミナーのお知らせ]
- 日時
- 11月7日(金)14:00~16:00
- 場所
- オンライン開催
- 発表者1
- 川崎 高雄(北極環境変動総合研究センター 北極域気候変動予測研究グループ)
- タイトル
- 北極域高解像度海洋モデルへの粒子追跡手法の適用とその応用
- 要旨
- 北極域研究強化プロジェクト(ArCS III)の研究基盤として北極域シミュレーションシステム(AReSS)が設置された。AReSSでは現在、北極域を高解像度とした海洋大循環モデルの構築を行っており、モデルによって創出される海洋循環場に粒子追跡や海洋生態系モデルを組み合わせることで、分野間連携研究を推進する。
本セミナーでは、まずこれまでの私の研究を紹介することで、AReSSのベースとなる海洋大循環モデルや粒子追跡手法について説明する。次に、AReSSで構築を進めている北極高解像度モデルについて現在の結果の概要を紹介する。さらに、モデルの海洋循環場を用いた粒子追跡手法が、海洋物質循環・海洋生態系に関する研究にどのように応用できるのか、その可能性について議論する。
- 発表者2
- 藤原 周(北極環境変動総合研究センター 北極海洋環境研究グループ)
- タイトル
- みらい最終北極航海MR25-05C航海報告
- 要旨
- 2025/8/31–10/5、北極域研究強化プロジェクトの枠組みのもと、現行の「みらい」最後の北極海航海(35日)を実施した。「みらい」はベーリング海以北の北極海(主にチュクチ海)にて、およそ3週間滞在し、基礎海洋観測(CTD/XCTD/採水/ADCP)を基軸としながら、大気・エアロゾル、微量金属、プランクトン、環境DNA、淡水循環、炭素固定、古環境復元といった学際的観測に加えて、機構開発中の自律観測型水中ドローンの潜水試験を実施した。また、2024年9月にバロー海底谷に設置した係留系3系、およびノースウィンド海底平原に設置した係留系1系の回収および再設置(2年係留/「みらいII」にて回収予定)を行った。本年のチュクチ海には、カナダ多島海側から流れてきた分厚い多年氷が卓越したことにより、海氷が多く分布し、またその融解の影響を色濃く受けた低温・低塩水によって海洋上層が広く覆われた特徴的な年となった。セミナー当日は水理環境や衛星観測の速報結果などを紹介する。
参加についての問合せ先:
北極環境変動総合研究センター 北極海洋環境研究グループ
朴 昊澤 park(at)jamstec.go.jp
[北極海洋環境セミナーのお知らせ]
- 日時
- 10月10日(金)14:00~15:30
- 場所
- オンライン開催
- 発表者
- 今井 望百花(北海道大学大学院 環境科学院 地球圏科学専攻)
- タイトル
- 南部オホーツク海から沿岸親潮域における海氷起源鉄の供給と春季植物プランクトンブルームへの寄与
- 要旨
- 南部オホーツク海とその影響を受ける沿岸親潮域は、海氷の後退に伴い大規模な春季植物プランクトンブルームが発達する基礎生産力の高い海域である。当海域における春季植物プランクトンブルームの発生要因のひとつとして海氷融解に伴う鉄供給の重要性が示唆されている。しかし、海氷融解による鉄供給は定量的に評価されておらず、海氷起源鉄が植物プランクトンの増殖に与える影響を示した直接的な証拠は少ない。本研究では、4月の南部オホーツク海と3月の沿岸親潮域において実施された春季の観測データから、南部オホーツク海における海氷起源鉄の供給を定量的に評価し、沿岸親潮域への海氷起源鉄の輸送について検討した。また、培養実験により海氷起源鉄が春季植物プランクトンブルームの発達に与える影響を評価した。
南部オホーツク海においては、海氷融解により表層混合層中に2.4±0.5%の海氷融解水が混合していた。海氷融解水混合後の表層混合層中において、海氷起源鉄は粒子態鉄を+17±4 nM供給し、これは表層混合層中の粒子態鉄濃度の約4割に相当した。海氷融解により供給される溶存態鉄はわずかであり、表層混合層中の溶存態鉄濃度はほとんど変化しなかった。また、沿岸親潮水における海氷融解水の寄与は2.3±0.6%であり、海氷融解水を含む高い鉄濃度を持つオホーツク海水が沿岸親潮域に移流することが示された。これらの結果を踏まえて実施した培養実験では、海氷融解が粒子態鉄濃度を増加させ、海氷の有無が植物プランクトンの増殖速度と種組成に影響を与えることが示唆された。本研究結果は、海氷融解による鉄供給が大規模な春季植物プランクトンブルームの発達とその継続要因である可能性を示し、海氷による鉄供給量の変化が当海域における基礎生産力に影響を与えることを示唆した。