がっつり深める

極限環境の強アルカリ性の泉から、常識外れな微生物を発見!

強アルカリ性の水が湧き出し極限環境をつくる「ザ・シダーズ」の泉

――常識外れな微生物がいたその極限環境とは、どこでしょうか。

常識外れな微生物がいたのは、米国サンフランシスコの北に位置するザ・シダーズの泉です(写真3)。山に入ってから川を7つほど越えた先にあります。

図3
写真3 ザ・シダーズにある、蛇紋岩の水系から湧き出る泉。カルシウムが空気中の二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムの白い結晶が出来ている。

ザ・シダーズは私有地で、もともとオーナーが植物を育てようと購入したそうです。ところが、目的の植物がどうにも育たない。原因を調べると、土や水がアルカリ性らしいと。

――水はふつう中性ですよね。ザ・シダーズではなぜアルカリ性の水が?

オーナーが研究者にも依頼して調査を進めると、ザ・シダーズでは幅3.5km、長さ6.4km、深さ1~2kmからなるかんらん岩体が隆起していることなどが明らかになりました。かんらん岩とは地球の上部マントルを構成する主要鉱物です。そのかんらん岩は、地表から浸み込んできた雨水と反応すると、蛇のような模様の蛇紋岩に変質する「蛇紋岩化反応」を起こします(図1)。この反応で水素が生成され、続いてメタン、カルシウムなどができます。こうした反応によってザ・シダーズでは、100以上の泉でpH11~12と自然界で最も高い強アルカリ性の水が湧き上がっていたのです。

ザ・シダーズの断面イメージ
図1 ザ・シダーズの断面イメージ

――そんな場所が地上にあるとは初めて知りました。強アルカリ性の泉は、生物にとってどう極限環境なのでしょうか。

蛇紋岩化反応で生成される水素やメタンなどは、微生物のエネルギー源になりえるのですが、ザ・シダーズの泉には呼吸に必要な物質(酸素や硫酸など)がありません。また、強アルカリ性の水であるが故に呼吸によりエネルギーをつくることが難しい環境です。つまりそれは人間に例えると、目の前にヒレ肉があるけれど、酸素が無いので食べられない状態です。それに加えて、炭素、窒素、リンなどの栄養もありません。ザ・シダーズは生物にとって極めて過酷です。

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