がっつり深める

理論予測されていたカンラン石組成の新物質を隕石から発見

一喜一憂せず、黙々と粛々と!

――富岡さんは、どのような姿勢で研究に取り組まれているのか教えてください。

一喜一憂せず、黙々と粛々と取り組むようにしています。

TEMを使った観察は、暗い部屋に1人でこもって黙々と行います(動画)。根気がいる地道な作業です。この研究でも、写真10のイプシロン相そのものを探し出すのにはとても苦労しました。単に倍率をあげればいいというものではありません。目的の像を高解像度できれいに見るためには、沢山の電磁レンズの調整が必要です。その調整も、数十万倍もの拡大率ではより敏感になるので、キッチリと行わなくてはいけません。そして調整できたところで、そこに目的のものがあるとも限りません。電子光学調整と場所探しをひたすら続けるのです。

動画 TEMを使った作業の様子

――今回のイプシロン相発見に至るまでに大きかったものは、何でしょうか。

ちょっと自慢のようになりますが、長年にわたって1つの隕石を見てきた経験と積み重ねてきた知識かと思います。

私は学生時代から地球内部の研究をしてきました。当初は高温高圧実験で得られた合成試料を調べていましたが、天然の試料との比較をしたいと考え、隕石の分析も始めました。博士課程の大学院生のときに、指導教官の藤野先生にテンハム隕石を購入していただいたことを覚えています。それから20年以上にわたり、地球深部科学と隕石学の両方の分野に足を踏み入れてきました。ふつうはどちらか片方の分野に集中するものなんですよ。分野の境界で研究を続けてきたことが、今回の発見につながったのではないかと思います。

――1つだけではなく2つの分野で長年積み重ねてきたものが大きかったのですね。ありがとうございました。

リンク:
高知コア研究所

http://www.jamstec.go.jp/kochi/j/
高知コア研究所 大解明!
https://www.jamstec.go.jp/j/pr/topics/quest-20171004/

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