海洋資源の成因の科学的研究に基づく調査海域の絞り込み手法の開発
未だ明らかになっていない海洋資源の成因を解明し、科学的成因論に基づき資源が賦存する有望海域を絞り込みます。
- 国立研究開発法人海洋研究開発機構
- 鈴木 勝彦
- 次世代海洋資源調査技術研究開発プロジェクトチーム
成因研究ユニットリーダー - 海底資源研究開発センター 研究開発センター長代理
計画概要
具体的には、海底熱水鉱床については、沖縄海域・伊豆小笠原海域等における非活動的ないし潜頭性の鉱床を対象とし、科学掘削、物理探査等による観測結果と産業技術総合研究所が行う海洋地質学的観点からの解析結果を踏まえて、海洋資源の成因モデルを提案します。さらに、鉱体を形成しやすい地質条件を検討するために、電気・電磁探査法をベースとした探査技術開発を進めます。
コバルトリッチクラストについては、新たに延伸が認められた海域等をターゲットにしており、クラストの生成、成長過程を解明するため、無人探査機(ROV)を用いての産状観察や、採取した試料の化学分析、同位体分析を行い、厚く高濃度の有用元素を含むクラストの形成される条件を明らかにします。
レアアース泥については、南鳥島周辺の海域をターゲットにして、採泥調査、船上からのサブボトムプロファイラーを用いた地質構造の解析を通じて、レアアース泥の水平方向の拡がりを把握するとともに、基盤岩までの掘削調査を行い、基準となるコア試料を採取し、その成因を解明します。
平成28年度をめどに、これまでの調査等で科学的基礎情報の蓄積が比較的多い特定海域において重点的に調査を進め、海底鉱物資源の成因モデルの構築を行い、その後、平成30年度までに周辺海域において成因モデルの検証を行います。
- 国立研究開発法人産業技術総合研究所
- 池原 研
- 地質情報研究部門 首席研究員
計画概要
特に基盤岩類の性質や成因の検討を行い、広域的な資源形成の「場」の海洋地質学的な検討を分担します。そして、最終目標として、新たな有望海域の抽出に資する地球科学的指標の特定と、有用元素濃集域周辺の造構モデルの提案を目指します。
海底熱水鉱床に関しては、基盤岩類の成因の解明を通して、有用元素供給源の解明や熱水活動との関係やそれらの周辺の地形・地質との関係を明らかにします。
コバルトリッチクラストに関しては、産総研の地質学的知見や分析技術等を活かし、元素濃集機構の解明を通して、クラスト形成の成因解明に取り組みます。
- 九州大学
- 石橋 純一郎
- 国立大学法人九州大学 理学研究院 准教授
計画概要
熱水鉱床を囲むように分布する熱水変質鉱物に着目して解析し、鉱床モデルに取り込むべき新たな地球化学的指標を提案します。鉱床の中心部から周縁部に向って変動する化学的指標を見出すことができれば、高品位の鉱石が集まる部位や鉱床の規模を推定することに有効であると考えています。
さらに、地球化学的指標が変動する要因を考えるために、熱水変質鉱物を形成する熱水化学反応や、その反応を引き起こす流体の動きの解明に挑みます。これらの地球化学的指標を海底下の物理・化学環境や熱水反応の進行過程と科学的に結びつけることで、どのような熱水反応過程で鉱床が形成されるのかという問題解決につながると考えています。
大規模な熱水鉱床が形成されるには、様々な熱水化学反応が長大な時空間スケールで進行することが必要です。この時空間スケールをカバーするために以下の3つのサブテーマを設定し、7つの支援研究機関とともに研究を推進します。
図1 研究計画概要
九州大学の研究者は、本研究が開始する以前よりSIP課題による掘削が行われた沖縄トラフ伊平屋北海丘を対象とした研究を、進めて来ました。
IODP Expedition 331の科学掘削で得られた堆積物中の熱水変質鉱物の解析を行い、深くなるにつれて見られる熱水変質鉱物が変わっていくことを見出しました。この熱水変質鉱物の帯状の分布は、海底下の温度構造や流体挙動を反映していると考えられます。 |
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図2 伊平屋北海丘熱水域海底下の熱水性変質鉱物の鉛直分布(Miyoshi et al., 2015) |
伊平屋北海丘とその周囲の地層を地震波探査法により解析を行い、熱水活動域の海底下に強い反射を示す面が広がっていることを見出しました。この反射面は、熱水だまりの上蓋に相当すると考えられます。 |
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図3 伊平屋北海丘を対象とした反射法地震波探査データの統合(Tsuji et al., 2012) |
- 高知大学
- 臼井 朗
- 国立大学法人高知大学 総合研究センター 特任教授
計画概要
北西太平洋の海底に広く分布するマンガンクラスト(団塊含む)はコバルト等のレアメタルを含むことから、近未来の有望な海底鉱物資源として注目されています。しかし、その多様性の原因は解明されていないため、探査・評価手法が確立されていません。
本研究では、マンガン鉱床を「異なる地質時代の沈殿物が積層した堆積鉱床」とみなして、3つの重要なサブテーマの解明を目標として、その多様性を規制する海洋環境要因を探ります。1)現世沈殿物を対象として、酸化物形成とレアメタル濃集の資源形成モデルを構築、2)マンガンクラストと団塊の形成史と海洋地質環境変動史との関連を解明、3)現地調査により、産状と鉱床・鉱石の広域的〜局地的変動のパターンを把握することが主眼となります。
それらの統合的解釈により、新生代の海底マンガン鉱床の生成史を把握でき、その成果は、鉱床探査、評価、採鉱システムデザインなどに活用されます。
高知大学 海底鉱物資源研究室(臼井朗)
http://sc1.cc.kochi-u.ac.jp/~usui/index.html
- 東京大学
- 中村 謙太郎
- 国立大学法人東京大学大学院工学系研究科 准教授
計画概要
本研究は南鳥島EEZ(排他的経済水域)を対象に、これまでSIPでは主要な研究対象とされてこなかったマンガン団塊に着目し、これを従来から個別に成因研究がなされてきたレアアース泥とコバルトリッチクラストに加えて一体的な研究を行うことで、これら3つの海底鉱物資源の成因とその相互の成因的関連を明らかにすることを目標とします。
そのために、南鳥島EEZ内のマンガン団塊,レアアース泥,コバルトリッチクラストについて、JAMSTECおよび産総研と協力し、以下の3項目を実施します。
(1) 主成分・微量元素組成データセットの構築
(2) Os同位体年代決定法による生成年代の決定
(3) 分析によって得られた化学組成データセットの統計解析による、起源成分および生成プロセスの抽出
さらに、これらの研究によって得られた結果から、南鳥島EEZ内における3つの海底鉱物資源の分布を特定するとともに、有効な探査指針の提案することを目指します。
東京海洋大学
http://www2.kaiyodai.ac.jp/~hirokun/SIP/index.html