なぜ、いま「次世代海洋資源調査技術」なのか?
現在では金属資源のほとんどを輸入に頼っている資源小国の日本。かつては金、銀や銅、鉛などのベースメタルを多く算出してきた歴史がありますが、これらを産出した鉱山は既に一部を除き、そのほとんどが役目を終えています。
ところが最近、それらの鉱物資源が日本列島を取り巻く海底に存在していることが分かってきました。
元々、陸上にあった鉱物資源は、かつて海底で日本列島の原型ができた頃に生まれたものと考えられています。それが今、まさに海底で生まれています。
日本は国土面積の12倍にも及ぶ広大な領海および排他的経済水域(EEZ)を有しており、効率的に海域を調査することで有望な鉱物資源を見つけることができるでしょう。
しかしながら、深海は電波や太陽光が届かず高圧環境であるため、陸上の鉱物や石油・天然ガス資源の調査における衛生を活用した広域調査やボーリングによる調査とは異なる技術が必要となります。また、海洋鉱物資源の技術開発を進めるためには巨額の費用が必要となり、現在は、海洋鉱物資源開発は世界的に本格化していません。これらの問題を克服して広大な海域を民間企業が効率的に調査するためには、更なる技術開発が必要となります。
そこで、国が主導して、府省連携の下、日本の海洋に関する科学技術を担う研究機関等が一丸となり、科学的知見に基づく成因論、有望海域を絞り込む効率的な調査システムや将来の海洋資源開発に不可欠な環境影響評価手法などの海洋資源調査技術の開発を推進します。それらの技術を統合して民間企業へ移転していくために、日本の海洋資源調査能力を高める計画、次世代海洋資源調査技術(「海のジパング計画」)が始まりました。
「海のジパング計画」では、主に日本近海の海底に存在する3種類の海洋鉱物資源を対象として調査技術の開発を行います。
しかしながら、これらの資源を見つけて、回収するのは容易ではありません。
それは陸上の鉱物資源調査と比べて以下の点について相違があるためです。
正確な場所が良く分かっていない。
各海洋鉱物資源の正確的な場所や拡がり、濃度、形態が明らかになっていないため、具体的に「どこ」を探せばいいのか分かりません。具体的な場所が分からないと、見通しの利かない暗闇を懐中電灯で探し回るような形になり、発見までに多大な時間を必要とします。
効率的な調べ方が分かっていない。
陸上の調査とは異なり、海中は電波が届かないので、衛星を使って空から調べられません。そのため、海中は、音波や電気を使って調べますが、海洋特有の様々な障害によりうまく調べられません。また、海底下の様子を迅速に、かつ正確に調べる方法は未だ十分に確立されていません。
海洋生態系の様子が良く分かっていない。
陸上で鉱山開発を行う場合、周囲の生態系環境への影響を抑える必要があります。海洋で開発を行うときも同様に配慮する必要があります。しかし、陸上と異なり明確なルール作りや環境を監視するための技術開発はまだ十分に行われておりません。
これらの問題を解決するために、次世代海洋資源調査技術では、以下のことに取り組みます。
海洋鉱物資源の成り立ちを調べて、その存在を予測する技術の開発
これらの海底鉱物資源の成り立ちを調べれば、「どこに」「どれだけ」「どのように」存在するか、科学的な観点から予測できるようにします。
海底を効率的に探索して、海洋鉱物資源を探し出すための機器・技術開発
自律型無人探査機(AUV)、遠隔型無人探査機(ROV)や曳航体などの水中探査機器を活用した効率的な探査手法を開発します。
海洋鉱物資源開発における海洋環境への影響を抑えるための基準づくり
将来、海洋資源調査技術が進展し、資源開発を行う際、開発の影響を正確に把握し、持続的な生態系を維持できる基準や計測手法を明確にします。