2017年11月号:今年の冬の天候は?

写真:秋が深まる東京の日比谷公園

気候変動と感染症のプロジェクトで、東京を訪問した際に撮った写真です。東京は秋が深まっていますね。9月から10月にかけて、日本でも台風が2個上陸し、全国的に雨が多くなりましたが(気象庁)、11月になって比較的穏やかな天候が続いています。一方、世界各地の天候を見てみますと、インドネシアやオーストラリアでは依然として気温の高い状態が続いており(オーストラリア気象局)、アメリカ西部のカリフォルニアでは干ばつや山火事が発生するなど(Drought.gov)、異常天候に伴う災害も発生しています。これから寒い季節がやってきますが、日本を含む世界の冬の天候が気になりますね。

SINTEX-Fの季節予測によると、今年12月から来年2月は、アフリカやブラジルの一部の地域を除いて、世界の多くの地域で気温が平年より高くなる見込みです。また、フィリピンやブラジル北部、アフリカ南東部などでは雨が平年より多く、インドネシアやアメリカ西岸、ブラジル南部などでは雨が少なくなる見込みです。

原因の1つとして挙げられる熱帯域の気候変動現象ですが、太平洋では熱帯域の西部で海面水温が平年よりわずかに高くなり、中央部から東部でわずかに低くなる、弱いラニーニャ現象の状態が続きそうです。このため、フィリピン周辺の海域で対流活動が強まり、特にフィリピンでは雨が平年よりも多くなる可能性があります。

今年12月から来年2月までの気温と降水量は?

図1 2017年12月から2018年2月までの地上気温の平年差(ºC)。 予測開始日は11月1日。

今年12月から来年2月までに予測される世界の気温です。SINTEX-Fの予測によると、世界の多くの地域で気温が平年より高くなりそうですが、アフリカやブラジルの一部の地域では、気温が平年より低くなる見込みです(図1)。

図2 2017年12月から2018年2月までの降水量の平年差(mm/日)。予測開始日は11月1日。

次に、今年12月から来年2月までに予測される世界の降水量を見てみましょう。SINTEX-Fの予測によると、フィリピンやアフリカ南東部、オーストラリア東部、ブラジル北部では、雨が平年より多くなりそうです(図2)。一方で、インドネシアやオーストラリア西部、中国東部、アメリカ西部、ブラジル南部、ヨーロッパ南部、西アフリカでは、雨が平年より少ない見込みです。

また、日本の冬は、気温が平年より高く、雨が少なくなりそうです。ただし、中高緯度の予測精度には限界がありますので、今後の予測情報に注意してください。

図3 2017年12月から2018年2月までの海面水温の平年差(ºC)。予測開始日は11月1日。

日々の天気と異なり、季節を決める気候の変動には海面水温が大きく関わっています(参照:季節予測とは?)。特に、熱帯は他の海域に比べて海面水温が高く、わずかな海面水温の変動が世界の気候に影響をもたらします。

SINTEX-Fの予測によると、今年12月から来年2月まで太平洋の熱帯域は、西部で海面水温が平年よりわずかに高く、中央部から東部でわずかに低くなる、弱いラニーニャ現象の状態が続く見込みです(図3)。一方、熱帯のインド洋は、海面水温が平年並みの状態が続く見込みです。

図4 2017年11月以降に予測される、エルニーニョ指数とインド洋ダイポール指数(ºC)。予測開始日は11月1日。青線が観測値、灰線が9つの異なる初期条件で計算した予測値、赤線が9つのグレーの予測値の平均値。

これらの気候変動現象は今後どのように発達していくのでしょうか?そこで、熱帯域の気候変動現象が最もよく現れる海域で平均した海面水温の平年差を見てみます。エルニーニョ指数を見ると(図4上段)、来年の春までわずかにマイナス0.5度を下回る、 弱いラニーニャ現象の状態が続きます。その後、来年の夏には平年並みの状態になりそうです。弱いラニーニャ現象の状態は、他の研究機関の予測結果でも見られます(IRI ENSO Forecast)。一方、インド洋ダイポール指数を見ると(図4下段)、平年並みの状態がしばらく続き、来年の夏以降に正のインド洋ダイポール現象が発達する見込みです。ただし、予測値(9つの灰色線)のばらつきが大きいので、今後の予測情報に注意してください。

日本を含む世界の気候には、太平洋に発生するエルニーニョ現象やラニーニャ現象だけでなく、インド洋に発生するインド洋ダイポール現象なども大きく影響を及ぼすことが分かっています。今年12月から来年2月は、インド洋は平年並みの状態が続きますが、太平洋の熱帯域では弱いラニーニャ現象の状態が続き、特にフィリピンで雨が多くなる可能性があります。海洋起源の気候変動現象がこれからどのように変動し、世界の気候にどのような影響を与えるか、今後注意してみていきましょう。