
写真:パシフィコ横浜から見た東京湾(Copyright: JAMSTEC/APL)
皆さま、いかがお過ごしでしょうか?8月20−22日に横浜で第9回アフリカ開発会議(TICAD9)が行われ、JAMSTEC/APLでは気候変動と感染症に関するサイドイベントを実施しました(こちら)。暑い日差しの中、会場までお越しくださった、皆さまに心から感謝申し上げます。さて、これから季節が秋に変わります。日本を含め世界の天候が気になりますね。
SINTEX-Fの季節予測によると、今年の9月から11月は、世界の多くの地域で気温が平年より高くなりますが、インドネシアでは気温が平年より低くなる見込みです。
また、メキシコの一部、西アフリカの一部、スペイン、中国西部、ハワイでは、雨が平年より少なくなる見込みです。一方で、西太平洋諸島、インドネシア、フィリピン、インドの一部では、雨が平年より多くなる見込みです。
原因の1つとして、海水温の変動が挙げられます。太平洋の熱帯域では、中央部で海水温が平年より低く、東部と西部で高くなるラニーニャもどき現象が発達する見込みです。また、インド洋の熱帯域は、東部で海水温が平年より高く、西部で平年並となり、負のインド洋ダイポール現象が発達する見込みです。
今年の9月から11月までの気温と降水量は?

図1 2025年9月から11月までに予測される地上気温の平年差(ºC)。予測開始日は8月1日。黒点はシグナル(24個の異なる条件で予測した実験の平均値)がノイズ(24個のの異なる条件で予測した実験の平均値からのずれ)より大きい所(ノイズの標準偏差の0.75倍以上)を表す。
今年の9月から11月までに予測される世界の気温を見てみましょう。SINTEX-Fの予測によると、世界の多くの地域で、気温が平年より高くなる見込みです(図1)。特に、カナダ東部、アメリカの多くの地域、メキシコ、ブラジル東部、チリ、アルゼンチン、ウルグアイ、ニュージーランド、オーストラリア北部、アフリカ南部、東アフリカ、アフリカ北西部、スペイン、イギリス、スカンジナビア、ロシアの多くの地域、中東の一部(パキスタンを含む)、中国、東アジア、東南アジアの一部では、予測されるシグナルがノイズより大きく(図1の黒点)、暖かくなりそうです。一方で、インドネシアでは、気温が平年より低くなる見込みです。

図2:2025年9月から11月までに予測される降水量の平年差(mm/日)。予測開始日は8月1日。 黒点はシグナル(24個の異なる条件で予測した実験の平均値)がノイズ(24個のの異なる条件で予測した実験の平均値からのずれ)より大きい所(ノイズの標準偏差の0.75倍以上)を表す。
次に、今年の9月から11月までに予測される世界の降水量を見てみましょう。SINTEX-Fの予測によると、メキシコの一部、西アフリカの一部、スペイン、中国西部、ハワイでは、予測されるシグナルがノイズより大きく(図2の黒点)、雨が平年より少なくなる見込みです(図2)。一方、西太平洋諸島、インドネシア、フィリピン、インドの一部では、雨が平年より多い予測となっています。
また、日本は多くの地域で気温が平年より高くなる見込みです。ただし、中高緯度の予測精度には限界がありますので、今後の情報に十分に注意されてください。
今年の9月から11月までの海面水温は?

図3:2025年9月から11月までに予測される海面水温の平年差(ºC)。予測開始日は8月1日。
日々の天気と異なり、季節を決める気候の変動には海水温が大きく関わっています(参照:季節予測とは?)。特に、熱帯は他の海域に比べて海面水温が高く、わずかな水温の変動が世界の気候に影響をもたらします。
SINTEX-Fの予測によると、今年の9月から11月まで太平洋の熱帯域は、中央部で海水温が平年より低く、東部と西部で高くなるラニーニャもどき現象が発達する見込みです(図3)。一方、インド洋の熱帯域は、東部で海水温が平年より高く、西部で平年並みとなり、負のインド洋ダイポール現象が発達する見込みです。

図4:2025年8月以降に予測される、エルニーニョもどき指数とインド洋ダイポール指数(ºC)。予測開始日は8月1日。黒線が観測値、複数のカラー線が24個の異なる条件で実験した予測値で、紫線が24個の予測値の平均値。
それでは、これらの海水温の変動が今後どのように発達、減衰していくのでしょうか?そこで、海水温の変動が最もよく現れる海域で平均した海水温の平年差を見てみましょう。熱帯太平洋のエルニーニョもどき指数を見ると(図4上段)、ラニーニャもどき現象は秋に発達しますが、冬に平年並みの状態に戻る見込みです。ただし、予測値(24個のカラー線)の振幅にばらつきが見られるため、今後の情報に注意されてください。こうした傾向は、他の一部の研究機関の予測結果でも見られています。
一方、インド洋の海水温の変動ですが、インド洋ダイポール指数を見ると(図4下段)、負のインド洋ダイポール現象が秋に発達しますが、冬に平年並みの状態に戻る見込みです。ただし、予測値(24個のカラー線)の振幅にばらつきが見られるため、今後の情報に注意されてください。こうした傾向は、他の一部の研究機関の予測結果でも見られています。
日本を含む世界の気候には、太平洋に発生するエルニーニョ・ラニーニャ現象だけでなく、エルニーニョ・ラニーニャもどき現象やインド洋ダイポール現象など他の海域の水温の変動も影響を及ぼすことがわかっています。海洋起源の気候変動現象がこれからどのように変動し、世界の気候にどのような影響を与えるか、今後注意してみていきたいと思います。