[活動日誌]大槌シンポジウム

9月8-10日に開催された、大槌シンポジウムに参加しました。大槌シンポジウムは、岩手県大槌町で毎年開かれる研究集会で、今年で35回目になります。大槌シンポジウムは、伝統的に、ベテランと学生を含む若手研究者、大学と官公庁の研究者間の貴重な交流の場となっています。今年は、海洋パートを気象研究所・豊田隆寛主任研究官が、大気パートを海洋研究開発機構アプリケーションラボ・吉田聡研究員がコンビーナーをつとめました。海洋と大気の研究者が一堂に会し、東北沿岸の海洋現象から、グローバルスケールの気候現象まで、活発な議論がかわされました。

大槌町には、東京大学 大気海洋研究所 国際沿岸海洋研究センターがあります。以前は、このセンターでシンポジウムが開かれていましたが、2011年東日本大震災の津波により大きな被害を受けました(図1)。開催の継続は不可能かと思われましたが、大槌町からご協力をいただき、会場(大槌町役場中央公民館)および 宿泊場所(波板交流促進センター)をお借りし、2011年も含め、その後も変わらず開催されています(※1)。図2は、会場の近くから見た大槌町の現在の様子です。震災後の変化を思うと胸が痛みます(※2)。

Fig1

図1: 津波の被害を受けた国際沿岸海洋研究センター。2013年8月28日筆者撮影。

 

Fig2

図2: 会場の大槌町役場中央公民館近くから見た大槌町。奥に見えるのが大槌湾。2015年9月8日筆者撮影。

 

筆者(美山)は、北海道東方に存在する準定常ジェット(通称、磯口ジェット)の力学について発表しました。図3に、北海道・東北沖の海面水温と海流の平年値をしめします。親潮が第一分枝(OY1)・第二分枝(OY2)と流れた先に(※3)、北東方向に流れる海流が磯口ジェットです。ほとんど同じ位置(準定常)に強い流れが生じるという不思議な性質をもっており、この海域の漁場形成にも重要だと考えられています(※4)。

今年も大槌の方にはお世話になりました。復興が進むことを願ってやみません。

図3: JCOPE2による平年値(1993-2012年平均)。矢印は表層の流速(メートル毎秒)、色は海面温度(ºC)。

図3: JCOPE2による平年値(1993-2012年平均)。矢印は表層の流速(メートル毎秒)、色は海面温度(ºC)。

 

参考
海洋研究開発機構は東北の漁業復興を目指して研究を行う東北マリンサイエンス拠点形成事業に参加しています。
海洋研究開発機構・東日本海洋生態系変動解析プロジェクトチーム

 


※1 大槌シンポジウム(2011/11/11〜13)開催報告参照。

※2 朝日新聞記事「(いま伝えたい)訪ねた故郷 次は避難の祖母と2人で」(2013/3/14)には会場近くの城山公園から撮った震災前と後の写真が掲載されています。

※3 親潮第一分枝・第二分枝に関しては2015年7月3日解説「親潮はどんな流路になっているの?」を参照。

※4 沖合の生物的hot spotの形成(伊藤進一)参照。

 


美山 透

海の変化は、漁業海運エネルギー天候など様々なことに影響します。海洋予測がもっと身近なものになるように、頭をしぼって書いています。