宿毛湾の海を活かしたまちづくりレポート1

〜海の天気予報で宿毛湾を豊かにする〜

今回は、アプリケーションラボで行っている、高知県宿毛湾での取り組みについて紹介します。

高知県の西南端に位置する宿毛湾は、沖合を流れる黒潮の影響を強く受けて、豊かな漁場となっています(図1)。イワシやサバなどのまき網漁のほか、湾内ではブリやマグロなどの養殖が行われています。沿岸域では、日本でも有数の海洋生物種が存在しており、海水浴やダイビング、磯釣りなどの観光業が盛んです。

  しかし近年、宿毛湾の海洋環境が変わりつつあります。2009年から毎年湾内で赤潮が発生し、養殖への被害が報告されています。また、海洋生物の住処となる藻場が、磯焼けにより著しく減少しています。これら海洋環境の変化と共に、宿毛湾の漁獲量も年々減少を続けています。

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図1 高知県宿毛湾に位置する、クロマグロの養殖で有名な柏島の海

宿毛湾で見られる様々な問題に対応するため、宿毛湾に位置する宿毛市と大月町では、2012年11月から笹川平和財団海洋政策研究所の支援を受けて、宿毛湾の沿岸域総合管理研究会を行ってきました。数年に渡って、宿毛湾の環境状態を調べる「海の健康診断」が行われ、診断の結果や対策などをまとめた報告書が2016年2月に宿毛市長と大月町長に提出されました。

 JAMSTECアプリケーションラボでは、2014年12月より研究会に参加し、JFすくも湾漁業協同組合や宿毛漁業指導所と協力し、独自の海洋シミュレーション(JCOPE) を使った宿毛湾の水温や流れに関する海況予報システムを開発してきました。そして、北太平洋を水平9kmの分解能で行ったシミュレーションを、日本近海で 3km、宿毛湾を含む豊後水道で200m、と3段階の分解能に分けて計算した「宿毛モデル」の開発に世界で初めて成功しました(図2)。

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図2 宿毛湾の水温(色)と流れ(矢印)のシミュレーション。左が3kmの分解能、右が200mの分解能。

  そこでまず始めに、3kmの分解能で行った豊後水道の海況予報を2015年12月より宿毛湾を利用する関係者の皆さまに公開しました。現在、200mの分解能をもつ「宿毛モデル」による宿毛湾の海況予報の準備を進めておりますが、これによりさらに細かい宿毛湾の水温や流れなどの情報を知ることができます。 今後は、予測された情報が正しく再現されているか、現場のデータを用いて検証していく必要があります。宿毛湾を利用する関係者の皆さまと協力して「宿毛モデル」を改良することで、宿毛湾の海を活かしたまちづくりに貢献していきます(図3)。

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図3 宿毛モデルの開発に協力していただいている関係者