2月20日から3月19日の予測を検証します

毎月月末は過去1ヶ月の予測を検証する予定です。今回は2016年2月26日号の、2月20日から3月19日までの予測を検証します。

図1上段は、2月20日から予測した3月19日の黒潮の状態です。2月26日号では、離岸傾向fの発達により、黒潮が八丈島の南を流れる離岸流路が大きく発達すると予測していました。残念ながら、実際には(図1下段)、離岸傾向fは弱く、離岸流路まで発達しませんでした。

図2は2016年2月20日から3月19日までの予測値(上段)と実際(下段)の比較をアニメーションにしたものです。

Fig1

図1: [上段]2016年2月20日から予測した3月19日の予測値。[下段]観測値を取り入れて推測した3月19日の解析値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。赤★は八丈島の位置。アルファベットd,e,..は接岸・離岸傾向の波(今週号の現状・予測参照)。

 


図2: 2016年2月20日から3月19日までの予測(上段)と実際(下段)の比較のアニメーション。クリックして操作して下さい。途中で停止することもできます。

kurokatsu

 

過去の解説で(※1)、伊豆諸島付近の黒潮流路を判断するには、八丈島での海面高度(潮位)を見れば良いことを説明しました。それは、流れの強い黒潮をはさんで、本州に近い方は海面高度が低い、逆の沖側では海面高度が高いという関係があるからです(図1参照)。このため、黒潮が本州に近づいて島の北を流れれば、島周辺の海面高度は高くなります。逆に、黒潮が島の南を流れる離岸流路が発達すれば、島周辺の海面高度は低くなります。

観測を確認してみましょう。図3は、過去の解説でも使用した、東京大学大気海洋研究所の「潮位データを用いた黒潮モニタリング」から、八丈島での海面高度(潮位)の今年の変化をグラフ作成したものです。今年2016年は、離岸流路(低い潮位)で始まり、1月末から2月初頭(接岸1)、2月末から3月初頭(接岸2)、3月末(接岸3)の、3回の接岸流路(高い潮位)のピークがありました。

接岸1と接岸2に関しては、かなり前から予測できていました。図4の青線は1月9日からの八丈島の潮位の予測です(1月15日号)。接岸1と接岸2の高い潮位のピークを予測できていました。

しかし、3月には離岸流路(低い潮位)が発達すると予測していました(図4青線)。2月20日からの予測(2月26日号)でも離岸流路が発達すると予測していました(図4の赤線)。これは図1,2でも見たとおりです。

3月5日から予測(図5の黒線, 3月11日号)まで、3月の離岸流路(低い潮位)の発達を予測していました。3月12日からの予測(図5の青線, 3月18日号)から予測が変わり、3月19日からの予測(図5の赤線、今週号の最新の予測)で、3月末の接岸3のピークがとらえられるようになりました。

今年2016年のこれまでの3つの接岸ピーク(接岸1,2,3)の予測成績は、2勝1敗といったところでしょうか。

今後は、今週号の予測の八丈島の水位を見ると(図5の赤線)、変動は大きいですが、離岸流路(低い水位)は発達せず、接岸流路の傾向(高い水位)が続くと予測しています。

Fig3

図3: 東京大学大気海洋研究所「潮位データを用いた黒潮モニタリング」の「各潮位データの図示」から、「期間: 2016年までの 1年間」で、「八丈島」(上段)「三宅島」(下段)でグラフ作成。単位はセンチメートル。矢印と字で注釈を追記した。

 

Fig4

図4: JCOPE2による八丈島周辺の海面高度の予測の2016年の時系列。青線が1月9日からの予測。赤線が2月20日からの予測。図3が1地点の観測値であるのに対し、図4の値はモデルの分解能の約9km四方の平均であり、0の値の基準点も違うので、図3と図4の値は完全には一致しません。上昇と下降の変化の傾向を主に見て下さい。

 

Fig5

図5: 図4と同じく、JCOPE2による八丈島周辺の海面高度の予測の2016年の時系列。黒線が3月5日からの予測。青線が3月12日からの予測。赤線が3月19日からの予測(最新の予測)。


※1
過去の八丈島の水位の解説一覧はこちら