2017年5月25日から6月26日の予測を検証します

毎月の月末は、過去1カ月の予測を検証する予定です。今回は2017年5月31日号の、5月25日から6月26日までの予測を検証します。5月31日付APLコラム「黒潮大蛇行は発生するか?」の検証でもあります。

予測と実際

図1上段は、5月25日から予測した6月26日の黒潮の状態です。図1下段は、観測値を取り入れて実際に近いと考えられる6月26日の状態です。図2は、同じく、予測値(上段)と実際(下段)の比較を、5月25日から6月26日までのアニメーションにしたものです。

5月31日号およびAPLコラムの予測で、東海沖に蛇行が大きく発達すると予測しました(図1上段)。実際に蛇行が大きく発達してきた(図1下段)という点で、予測は良く当たっていたと言えるでしょう。図2のアニメーションもご確認ください。ただし、蛇行の大きさは予測よりもやや小さめでした。

APLコラムでは、注目すべきポイントとして、蛇行が伊豆諸島の西側にとどまるかということをあげ、「微妙なところで、予測の難しいところ」と書きました。黒潮が八丈島の東に移りつつある兆候が観測にあらわれており(下で詳しく解説)、蛇行は伊豆諸島の西側にはとどまらない可能性が高まっています。。今週の予測も参照してください。

Fig1

図1: [上段]2017年5月25日から予測した6月26日の予測値。[下段]観測値を取り入れて推測した2017年6月26日の解析値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。赤は八丈島の位置。

 


図2:
2017年5月25日から6月26日までの予測(上段)と実際(下段)の比較のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

潮位計のデータを用いて黒潮流路を推理する

今週は人工衛星による観測があまり得られなかったので(今週の予測記事参照)、潮位計のデータを駆使して黒潮の流路を推理してみましょう。黒潮親潮ウォッチでしばしば使わせていだだいている東京大学大気海洋研究所の「潮位データを用いた黒潮モニタリング」のデータを今回も使います。「潮位データを用いた黒潮モニタリング」のサイトから、黒潮の流路情報に進み、「期間: 2017年までの1年間」を選ぶと、図3のような時間変化のグラフが出てきます。

Fig3

図3: 東京大学大気海洋研究所「潮位データを用いた黒潮モニタリング」のから黒潮の流路情報で「期間: 2017年までの 1年間」を指定しグラフ作成。単位はセンチメートル。矢印と字で注釈を追記した。

 

一番下のグラフのKPIは、トカラ海峡における黒潮の緯度をしめす指標で、今回は解説を省略します。

まず、図3の一番上のグラフは、串本・浦神の潮位差です。串本・浦神潮位差については、2016/4/1号「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」で解説したように、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸→潮位差大黒潮が離岸→潮位差小という関係があります[1]

図3を見ると、5月半ばから6月半ばまで、串本・浦神潮位差が小さくなっていました。これは、2017/6/7号「観測で見る小蛇行通過(2017年4月から6月初めまで)」で解説したように、小蛇行が紀伊半島沖を通過していたためです(図4(a)のイメージ図)。その後、串本・浦神潮位差は大きくなっており、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸したことがわかります(図4(b))。典型的な大蛇行の時は紀伊半島で離岸が続くのが通例なので、この時点で少なくとも典型的な大蛇行とは別の道を進んでいます(2017/6/21号「2004年の黒潮大蛇行と今年(2017年)の比較」参照。)

図3の2番目と3番目のグラフは、三宅島と八丈島の潮位の時間変化です。過去の解説で[2]、伊豆諸島付近の黒潮流路を判断するには、八丈島・三宅島での潮位を見れば良いことを説明しました。それは、流れの強い黒潮をはさんで、本州に近い方は海面高度が低い、逆の沖側では海面高度が高いという関係があるからです(図1参照)。このため、黒潮が本州に近づいて島の北を流れれば、島周辺の海面高度は高くなります。逆に、黒潮が島の南を流れる離岸流路が発達すれば、島周辺の海面高度は低くなります。

図3を見ると、6月になると三宅島でも八丈島でも潮位が上昇しています。つまり伊豆諸島付近では黒潮の位置が北上していたことを意味します(図4(a)から図4(b))。同時期に東海沖では蛇行が発達し、黒潮の流れは南に移動していましたが、それは伊豆諸島よりも西で発達していたことになります。

6月末になると、三宅島の潮位は高いまま、八丈島の潮位が下がり始めました。これは三宅島付近では黒潮はいぜんとして北を流れているものの、八丈島付近では黒潮が南に移りつつあることが分かります。これは、黒潮が八丈島付近で黒潮が北上し、S字カーブになっていることを意味しています(図4(c)。図1や、今週の予測記事の図2も参照。)同様のS字型カーブは2015年の末にも見られました。

以上のように、潮位計のデータを用いて黒潮流路を推理すると、黒潮の蛇行は伊豆諸島の西にとどまらず、東に移動しつつあるようです。

fig4

図4: 黒潮の変化のイメージ図。(a)5月末。(b)6月中旬。(c)6月下旬。

  1. [1]過去の串本・浦神潮位差の解説一覧はこちら
  2. [2]三宅島水位についての解説一覧はこちら、八丈島水位に関しての解説一覧はこちら

美山 透

海の変化は、漁業海運エネルギー天候など様々なことに影響します。海洋予測がもっと身近なものになるように、頭をしぼって書いています。