2017年6月26日から8月31日の予測(6月30日発表)

黒潮は八丈島付近をS字に蛇行しながら北上しています。房総半島では黒潮が近づいています。四国・室戸岬と紀伊半島・潮岬では黒潮が接岸しています。小蛇行で九州東岸で離岸しています。黒潮は大きめの離岸を保ちながら、八丈島の南を流れる離岸流路になるでしょう。長期的は九州東岸の小蛇行がどう動くかが注目点です。

JCOPE2の改良版であるJCOPE2M週2回の予測を行っています。ここでは2017年6月26日から8月31日の予測を解説します。

現状

図1と図2はJCOPE2Mで計算した6月26日と6月30日の黒潮の状態です。

黒潮は、比較的大きな離岸が(図1)、八丈島の東に移動し(図2)、八丈島付近を北上するS字型の蛇行に変化しているようです(図1,2)。S字型の蛇行については今月の検証で考察しています。

房総半島沖では、冷たい水塊(図1、離岸傾向[1])が去り、黒潮が近づいています(図2, 接岸傾向u)。

四国・室戸岬では黒潮が接岸しています(接岸傾向w)。潮岬でも接岸しています(今月の検証の考察参照)。九州東部では、小蛇行の一部が残り(小蛇行2)、離岸が続いています(離岸傾向x)。足摺岬は室戸岬と九州東部の中間で流れが不安定です。

Fig1

図1: 観測値を取り入れて作成した6月26日の推測値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。赤丸()が八丈島の位置。海面高度が低いところは海面水温が低いおおまかな関係があります。

 

Fig2

図2: 6月30日の予測値。

 

予測

図3・図4・図5は7月5日・7月12日・8月31日の予測です。

東海沖の(離岸傾向v)蛇行は、比較的大きな規模を保ったまま東に移動し(図3,4)、黒潮が八丈島の南を流れる離岸流路になりそうです。

九州東岸の小蛇行(小蛇行2)が黒潮下流(東)への移動をはじめる予測が出ています(図3,4)。小蛇行が通過する沿岸では流速の変動が大きくなります。長期的には、東海沖の今の大きい離岸は東に去り、小蛇行2が次の大きな蛇行になる可能性があります(図5)。

図6は、6月26日から8月31日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig3

図3: 7月5日の予測値。

 

Fig4

図4: 7月12日の予測値。

 

Fig5

図5: 8月31日の予測値。接岸・離岸の記号は略。

 


図6
: 2017年6月26日から8月31日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

「黒潮大蛇行は発生するか?」その後

2017年5月31日付けのAPLコラム「黒潮大蛇行は発生するか?」黒潮大蛇行が発生する可能性を解説しました。この欄ではその後の様子を見ていきます。今月の予測検証記事もあわせてご覧ください。

注目ポイントは、1.蛇行が本当に大きくなるか?2.蛇行が伊豆諸島の西にとどまるか?、の2つです。

まず、蛇行の大きさですが、私たちの推定では先週よりも大きくなっています(図1)。残念ながら梅雨前線の影響で今週は人工衛星による観測があまりできていません。図7の下段は今週の中でも比較的晴れ間が多かった6月29日に「ひまわり8号」が観測した海面水温です[2]。雲がちで、すこしぼやけてますが、先週の6月19日(図7上段)よりも温度が低いところが南に広がり、黒潮の蛇行が大きくなっているようです(温度の高い帯が黒潮)。来週以降に天気が良くなれば、今どれくらい蛇行が発達しているかさらにはっきりするでしょう。

次に、蛇行が伊豆諸島の西にとどまるかですが、潮位計のデータから推理すると(今月の予測検証記事参照)、八丈島の東に移動しつつあるようです。図7の人工衛星画像でも、冷たい海面水温が東にも広がっている様子がうかがえます。こうなると、大きな蛇行は短命に終わる可能性が高まります。最新の予測では、今の蛇行は東に去り、現在は九州東にある小蛇行が移動してきて次の大きな蛇行になる可能性が出ています[3]。とは言え、これはまだ先の話であり、今の蛇行を引き続き注意深く見ていきます。

Fig7

図7:6月19日と6月29日に「ひまわり8号」で観測された海面水温。は八丈島の位置。白くなっているところは雲がかかって観測できなかった所。

  1. [1]接岸と離岸の傾向を上流から一連のアルファベットで図示しています。赤字u,w,,が接岸傾向で、青字r,v,,が離岸傾向です。黒潮上に接岸・離岸傾向は交互にあらわれており、黒潮が波うっている様子をあらわしています。接岸・離岸傾向は黒潮の流れで下流に流されます。アルファベットは図1から図4まで共通で(前号とも共通ですが、あらためて記号を振り直したところもあります)、同じアルファベット、例えば接岸傾向uが、上流から下流に位置が動いていることをしめしています。
  2. [2]ひまわり8号」の海面水温については、2015/10/9号・気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮を参照。JAXA提供の「ひまわり8号」海面水温データは、2016年8月31日からバージョン1.2にバージョンアップしています。鹿児島県水産技術開発センター和歌山水産試験場からも「ひまわり」の画像が公開されています。過去の「ひまわり8号」の水温データを使った解説一覧はこちら
  3. [3]2013年のケースと似ているかも知れません。2013年のケースについては来週解説予定です。


JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。