海流と生態系の関係は?

図1の上段は、人工衛星MODIS Aquaで 観測された今年3月14日から4月14日までの植物プランクトン(クロロフィルa)の海面での濃度です。下段は同じ時期の海面水温です。高い海面水温で捉 えられる黒潮(図中A)は、沿岸(図中B)に比べて光合成の素になる栄養塩に乏しいので、植物プランクトンの量が薄くなります。したがって、植物プランク トン(図上段)で見ても、海面温度(図下段)で見ても黒潮(A)と沿岸(B)とではっきりと境目ができます。この図からも黒潮が現在東海沖で離岸流路をとっていることがわかります。

温度が高いが栄養塩に乏しい黒潮と、栄養塩は豊富だが冷たい親潮(図中C, ※1)が交じり合う領域(図中D)では植物プランクトンが豊富な領域が見られます(※2) 。これからの季節に日射量が増えるにつれて、親潮域では「ブルーム」と呼ばれる植物プランクトンの大増殖現象が起こっていきます(※3)。

図1がしめすように、海流と海の生態系には密接な関係があるのです。

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図1: 人工衛星MODIS Aquaで観測された3月14日から4月14日の平均値。灰色は陸地または雲によって観測できなかった地点。画像はSeaDASにより作成。[上段]植物プランクトンの濃度(クロロフィルa)。[下段]海面水温。

 

※1 今年の冷たい親潮についてはAPLコラム「茨城県の海岸に打ち上げられた多数のイルカと海洋異変について」でも解説しています。

※2 栄養塩と海水温度がプランクトンに与える影響についてはJAMSTECの解説動画「プランクトンと気候変動 Vol.1 プランクトンの世界」をご参照ください。

※3 参考資料 JAXA EORC 地球が見える「日本近海の海洋植物プランクトンの春季大増殖