更新日:2020/06/26

公募研究

高解像度データを用いた100年スケールの台風温低化と中緯度大気海洋変動の解析

研究代表者 中野満寿男# (海洋研究開発機構・研究員)
研究協力者 山田洋平# (東京大学・特任研究員)、小玉知央# (海洋研究開発機構・副主任研究員)、Malcolm Roberts# (英国気象局ハドレーセンター)
[学位:*海洋学,#気象学]

台風は、中緯度に達すると温帯低気圧へと徐々に構造が変化(温低化)する。温低化の過程にある台風は 強風半径が大きくなるとともに、しばしば極端な大気現象を引き起こすことが知られている。したがって、 中緯度における台風の温低化が、将来、地球温暖化によってどのような影響を受けるのかを調べることは、 科学的に重要な研究テーマであるとともに、適応策策定などの政策決定にも重要である。

日本付近は大気の南北温度勾配だけではなく、海面水温の南北勾配も大きい。台風のエネルギー源が 海面から供給される潜熱・顕熱によることを考慮すると、海面水温の南北勾配が台風の温低化に影響すると考えられる。 1950年以降、台風シーズン(7-9月)における日本付近の海面水温は大まかには熱帯側で上昇、極側で低下しており、 南北勾配は大きくなっている(図1)。このため温低化が起こりやすくなっている可能性がある。

本研究では、近年利用可能になった過去約70年に及ぶ高解像度大気再解析データと、 1950年から2050年までの高解像度モデルによる現在気候再現・将来気候予測実験データ(HighResMIPデータ)を用いて、 特に中緯度大気海洋変動の影響を強く受けると考えられる台風温低化についての経年変動を100年スケールで提示する。 このために、

  1. 温低化する台風の個数・割合とそれらの経年変化、
  2. 温低化の開始・終了位置とそれらの経年変化、
  3. 温低化中の台風の構造(強風半径、降水、海面フラックスなど)の経年変化、
  4. (1) - (3) の海面水温勾配や海洋前線、ジェット気流の軸などといった大気海洋環境場との位置関係とそれらの経年変化、
  5. モデルや解像度の違いにより (1) - (4) に違いが見られるかを明らかにする。

図1:東経130-150度で平均した1950-1979年(細実線)と1980-2009年(太実線)7-9月平均水温