更新日:2021/08/02

観測

北海道南東方沖

2022年7月15日-8月2日に実施
新青丸KS-22-10航海 研究課題名「航空機との同時観測による北西太平洋の海洋起源エアロゾルとその雲微物理影響の解明」

Hotspot2プロジェクト最大の目玉の一つ、航空機-船舶同時観測が北海道南東方沖(三陸沖)で実施されました。この観測は当初2021年に実施する計画でしたが、新型コロナウィルスのパンデミックにより1年遅れとなりました。海洋側の観測を担う新青丸KS-22-10次航海は2022年7月15日(金)にJAMSTEC横須賀本部岸壁から出航し、7月24-26日に釧路寄港、8月2日(火)に八戸港に入港しました。

本航海は、夏季の北西太平洋亜寒帯域のエアロゾルと雲を世界で初めて船舶と航空機から同時観測することにより、この海域のエアロゾルと雲の特徴を解明するために 行われました。夏季の北西太平洋亜寒帯域は、下層雲量やその放射強制力が世界で最も高い領域の一つで、地球の放射収支に重要な役割を果たしています。この海域の雲を形成する 雲凝結核には、海洋起源エアロゾルと、大陸からの人為起源エアロゾルの両方の寄与がありますが、エアロゾルの性質によって雲のでき方・性質も異なります。 エアロゾルと雲の物理的特性を正確に把握することは気候研究にとって極めて重要です。エアロゾルは海洋への鉄供給や日射量の変化を通して海洋生態系にも影響します。 エアロゾルと雲の鉛直構造および海洋からの影響を把握するためには、船舶と航空機による統合的な観測を行う必要がありますが、そのような観測は当該海域ではこれまでほとんど 行われていませんでした。今回実施した同時観測は非常に珍しい試みであり、貴重なデータを取得することができました。

航海の前半は時化で荒天退避することがあり、CTD観測が少なめになりましたが、後半は穏やかな海況が続き、十分な観測ができました。ただ風が弱く、海面近くの大気が中立~安定なことが多かったぶん、海面水温の影響が大気に表れにくい状況ではありました。現在、採取したエアロゾルの分析を進めています。

コロナ対策に煩わされながら準備を進め、1年遅れで遂に出航。梅雨前線が近づく中、見送られながら横須賀本部の岸壁を離れる。それほど暑くはなかったが湿気が凄かった。

コンパスデッキの船首側に並べられたエアロゾル観測機器(中央と右側)と積算水蒸気量測定用のマイクロ波放射計(左端)

普段はガラガラであまり使われていないブリッジ裏の第一研究室に機材がぎっしり。コンパスデッキから引き込んだ空気を連続的に分析したり、フィルターを交換するなどした。

新青丸の上空を飛行する観測機(ダイヤモンド・エア・サービス社 King Air 200T)(上の写真は大畑祥さん撮影)

無事、八戸港に到着。右奥に美しい蕪嶋神社が見える。金運で有名らしい。早朝には雨が降っていたが幸運にも撤収作業時(夕方4時頃までかかった)には晴れた。この日の夜から翌日にかけて大雨。青森県で線状降水帯が発生した。

(上)観測点と8日間平均(7月28日~8月4日)の衛星観測クロロフィルa濃度(mg/m3)。(下)観測期間(7月17日~8月1日)の海面水温の気候値偏差(K)。Reynolds SST使用。かなり高水温だったことがわかる。

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川合義美(海洋研究開発機構)