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アプリケーションラボ(APL)

外国人研究者としてJAMSTECで働くということ

2017/11/16
Yu-Lin Chang(アプリケーションラボ研究員)

Yu-Lin Chang研究員(本人はEdaと呼んでほしいそうです)は、2017年8月からアプリケーションラボの研究員として仕事をしています。JAMSTECで働き始めて3ヶ月が過ぎましたが、EdaさんにJAMSTECで働くことについて感想を綴ってもらいました。

Yu-Lin Chang (Eda) 研究員略歴

2011年に国立台湾師範大学(NTNU)で博士号を取得、プリンストン大学、ダルハージー大学での研究を経て、2017年8月にJAMSTECに移る前は、同大学で准教授として働いていました。


2011年 プリンストン大学にて

2017年 NTNUで指導した学生たちと最後のグループランチ

海洋学研究者になるまで

私は、もともと海洋学の研究者になるとは思っていませんでしたが、海洋学研究者になってみて、今ではよかったと思っています。このことに日本語でぴったりと合う言葉があります。「人生は出会い」です。

15歳の頃から私は、高校の地学教師になろうと思っていました。この夢をかなえるために、台湾で最も評価が高い教育大学である国立台湾師範大学(NTNU)の地学科に入学しました。そこで気象学、海洋学、天文学、地質学、地球物理学、教育学を学びました。この中で特に興味を持ったのは地質学で、鉱物学と岩石学では満点の成績を取りました。

大学二年生のときに、海洋学のWu教授が、教師になりたいという望みを理解したうえで彼の研究室に参加するように誘ってきました。さらに彼は、学術会議が助成する学部生向けの研究プロジェクトに応募するようにさり気なく勧めました。Wu教授は思うとおりに活動させてくれ、時にはまったく放任してしまうほどでした。研究プロジェクト「台風が黒潮に及ぼす影響」は、私が教師になるための教育実習で研究室を去ろうとしていたときに、賞を取りました。Wu教授は研究室にとどまって修士学位をとるように勧め、研究室に残ることを決めました。結局今まで、教育実習に行くことはありませんでした。

こうして話は最初に思ったとおりに進みませんでしたが、私はだんだん海の研究が本当に面白いと感じるようになってきました。不思議な、たくさんの謎があり、博士課程の学生になりました。ただ、私はもともと教師になるための教育を受けており、浅く幅広い知識を学んでいたので、だんだんスキルと知識が自分の思いにつり合わなくなってきて、多くの努力を強いられるようになってきました。そこで海外で研究するための助成を得て、プリンストン大学のOey教授の研究グループに加わりました。三年間の滞在中、Oey教授は海洋モデリング、海洋力学、プログラミングについて教えてくれました。また、見聞を広げるために国際研究学会に参加することを強く勧めました。Oey教授がいなかったら、私は台湾に戻って教師になっていたことでしょう。ある国際研究学会で宮澤さんに出会い、彼は私の博士論文の審査員を務めることになり、今ではJAMSTECで宮澤さんとともに研究をすることになりました。


2012年 JAMSTEC主催のIWMO(International Workshop on Modeling the Ocean)に参加

海洋物理から海洋生物物理研究へ

私の専門は海洋物理学であり、大西洋と太平洋の海洋力学について研究してきました。三年前、ダルハージー大学での滞在中に、ウナギ幼生回遊の観測についての研究発表に惹かれました。海の生きものは海で生きているので、海の物理的な環境条件は必ず海の生きものに影響を与えているに違いない、そう思って私は、物理と生物をまたがる分野で研究してみようと思いました。そのときはこれ一回だけのつもりで、興味のおもむくままに取り組みましたが、生物-物理研究はダルハージー大学での滞在が終わった後も止まることはありませんでした。生物海洋学の多くの謎にひかれてもっと研究を進めていくと、海洋物理の知見が、従来と違う視点から長い間の疑問を解く助けになるかもしれないと気づきました。そこで二つめ、三つめの仕事に取り組み、今でもその続きに取り組んでいます。

台湾にとっての黒潮

台湾は日本とまったく同じように四方を海に囲まれています。特に黒潮は台湾にとって重要です。黒潮は多くの海の幸をもたらすと考えられています。最近では黒潮から電力をとりだすことも研究されています。ただし、台湾の隣人である黒潮は、時として良くない影響をもたらします。台湾は、台風がよく通る場所に位置しています。多くの台風は台湾に上陸する前に黒潮の上を通ります。暖かい水蒸気を伴った黒潮は台風を強める働きをして、台湾に破壊的な影響をもたらすことがあります。

日本での生活

東京に入って最初に電車のラッシュを経験したときは、どれだけ混むのかと本当にびっくりしました。東京(首都圏)での生活ペースはあわただしく、人々はとても、とてもハードに夜遅くまで働いています。台湾と同じように、東京には時々、台風がやってきます。台湾では、台風が上陸する日には政府が安全のために休日宣言をしますが、日本ではそのような「台風休日」はないようです。台湾と日本はともに地震地帯です。同じようなエネルギーの地震でも、私は日本では何となくより強い揺れであるように思います。多分、建物の設計の違いによるのだと思います。日本ではホテルの宿泊は一人あたりの料金なので、部屋当たりの料金となっている台湾や米国に比べて料金が高いと時々感じます。日本のスーパーマーケットはたぶん世界一で、そこでは新鮮な食材と、あらゆる種類の惣菜を求めることができます。コンビニでも、必要とするもののほとんどが手に入ります。


2017年 日本で最初の秋

JAMSTECでの仕事

JAMSTECで仕事をすることは楽しく、自分の興味あるところに集中させてくれます。同僚たちとおおいに研究のアイディアを議論し、意見交換をしています。研究に必要な設備もしっかりしていて、望むときに技術的な支援が得られます。そのうえ、ここには食堂があって、昼食や夕食について思い悩む必要がありません。

日本語がしゃべれないときはどうする?

JAMSTECで働く場合にはまったく問題ありません。ここには多くの外国人研究者がいます。英語だけで十分うまくやれます。研究者たちはもちろんのこと、事務職や門の警備の人たちも英語を話します!

外国で働こうと考えている海外の皆さん、JAMSTECは国際的に研究者を募っていて、良い研究の環境を提供しています。良き選択肢のひとつとして考えてみてはどうでしょう!