
写真:梅の花をついばむメジロ(Copyright: JAMSTEC/APL)
皆さま、いかがお過ごしでしょうか?研究所のある横浜では、梅が満開になりつつあります。花の蜜を吸いに、たくさんのメジロが集まって、微笑ましい光景が見られます。これから季節が春に変わりますが、日本を含め世界の天候が気になりますね。
SINTEX-Fの季節予測によると、今年の3月から5月は、世界の多くの地域で気温が平年より高くなりますが、ブラジル北部では気温が平年より低くなる見込みです。
また、アメリカ南部、メキシコ北部、エチオピアの一部、インドネシアの一部では、雨が平年より少なくなる見込みです。一方で、西太平洋諸島とフィリピンの一部の地域では、雨が平年より多くなる見込みです。
原因の1つとして、海水温の変動が挙げられます。太平洋の熱帯域では、中央部で海水温が平年より低く、東部と西部で高くなるラニーニャもどき現象が徐々に弱まる見込みです。また、インド洋の熱帯域は平年並となりますが、オーストラリアの北西沖で海水温が高くなるニンガルーニーニョ現象が弱りながらも持続する見込みです。
今年の3月から5月までの気温と降水量は?

図1 2025年3月から5月までに予測される地上気温の平年差(ºC)。予測開始日は2月1日。黒点はシグナル(24個の異なる条件で予測した実験の平均値)がノイズ(24個のの異なる条件で予測した実験の平均値からのずれ)より大きい所(ノイズの標準偏差の0.75倍以上)を表す。
今年の3月から5月までに予測される世界の気温を見てみましょう。SINTEX-Fの予測によると、世界の多くの地域で、気温が平年より高くなる見込みです(図1)。特に、アメリカ、メキシコ、ブラジル東部、ニュージーランド、オーストラリア西部と南東部、アフリカの多くの地域、サウジアラビア、インド西部、中国の多くの地域、東アジア、ロシア中部、イギリス、インドネシアの一部では、予測されるシグナルがノイズより大きく(図1の黒点)、暖かくなりそうです。一方で、ブラジル北部では、気温が平年より低くなる見込みです。

図2:2025年3月から5月までに予測される降水量の平年差(mm/日)。予測開始日は2月1日。 黒点はシグナル(24個の異なる条件で予測した実験の平均値)がノイズ(24個のの異なる条件で予測した実験の平均値からのずれ)より大きい所(ノイズの標準偏差の0.75倍以上)を表す。
次に、今年の3月から5月までに予測される世界の降水量を見てみましょう。SINTEX-Fの予測によると、アメリカ南部、メキシコ北部、エチオピアの一部、インドネシアの一部では、予測されるシグナルがノイズより大きく(図2の黒点)、雨が平年より少なくなる見込みです(図2)。一方、西太平洋諸島とフィリピンの一部の地域では、雨が平年より多い予測となっています。
また、日本は多くの地域で気温が平年より高く、沖縄では降水量が平年より少なくなる見込みです。ただし、中高緯度の予測精度には限界がありますので、今後の情報に十分に注意されてください。
今年の3月から5月までの海面水温は?

図3:2025年3月から5月までに予測される海面水温の平年差(ºC)。予測開始日は2月1日。
日々の天気と異なり、季節を決める気候の変動には海水温が大きく関わっています(参照:季節予測とは?)。特に、熱帯は他の海域に比べて海面水温が高く、わずかな水温の変動が世界の気候に影響をもたらします。
SINTEX-Fの予測によると、今年の3月から5月まで太平洋の熱帯域は、中央部で海水温が平年より低く、東部と西部で高くなるラニーニャもどき現象が弱まる見込みです(図3)。一方、インド洋の熱帯域は平年並みの状況となりますが、オーストラリアの北西沖で海水温が高くなるニンガルーニーニョ現象が持続する見込みです。

図4:2025年2月以降に予測される、エルニーニョもどき指数とニンガルーニーニョ指数(ºC)。予測開始日は2月1日。黒線が観測値、複数のカラー線が24個の異なる条件で実験した予測値で、紫線が24個の予測値の平均値。
それでは、これらの海水温の変動が今後どのように発達、減衰していくのでしょうか?そこで、海水温の変動が最もよく現れる海域で平均した海水温の平年差を見てみましょう。熱帯太平洋のエルニーニョもどき指数を見ると(図4上段)、ラニーニャもどき現象は徐々に弱まり始め、4月以降に-0.5度を上回り、平年並となる見込みです。ただし、予測値(24個のカラー線)の振幅にばらつきが見られるため、今後の情報に注意されてください。こうした傾向は、他の一部の研究機関の予測結果でも見られています。
一方、インド洋の海水温の変動ですが、ニンガルーニーニョ指数を見ると(図4下段)、1月の時点で1.5度を上回り、2011年に観測された過去最大級の強さに匹敵するほどの強いニンガルーニーニョ現象が発達していますが、2月以降は徐々に弱まりながらも持続していく見込みです。
日本を含む世界の気候には、太平洋に発生するエルニーニョ・ラニーニャ現象だけでなく、エルニーニョ・ラニーニャもどき現象やインド洋など他の海域の水温の変動も影響を及ぼすことがわかっています。海洋起源の気候変動現象がこれからどのように変動し、世界の気候にどのような影響を与えるか、今後注意してみていきたいと思います。