2024年5月号:今年の夏の天候は?

写真:一般公開のブース(JAMSTEC横須賀本部)

皆さま、いかがお過ごしでしょうか?5月18日にJAMSTECの横須賀本部で一般公開が行われ、私たちアプリケーションラボのブースでは、海と大気の流れの実験教室を行いました(写真)。当日は天気に恵まれ、夏のような暑い日差しの中、子供から大人までたくさんの方々にお越しいただき、誠にありがとうございました。これから季節が変わりますが、日本を含め世界の天候が気になりますね。

SINTEX-Fの季節予測によると、今年の6月から8月は、世界の多くの地域で気温が平年より高くなりますが、アルゼンチンでは気温が平年より低くなる見込みです。

また、アメリカ中部、カリフォルニア、メキシコ西部、南アメリカ大陸、インドネシアなどでは雨が平年より少なくなる見込みです。一方で、カナダの一部、アメリカ東部の一部、中央アメリカ、カリブ海地域、南アメリカ大陸の北部、西アフリカの一部、中央アフリカ、インド、スリランカ、ネパール、ブータン、インドシナ半島の一部、フィリピンの北部、東アジア、ノルウェー、ロシアとグリーンランドの一部などでは、雨が平年より多くなる見込みです。

原因の1つとして、海水温の変動が挙げられます。太平洋の熱帯域では、中央部で海水温が平年より低く、東部と西部で高くなるラニーニャもどき現象が少しずつ現れる見込みです。また、インド洋の熱帯域では、東部で海水温が平年より低く、西部で高くなる正のインド洋ダイポール現象が発達する見込みです(参照)。

今年の6月から8月までの気温と降水量は?

図1 2024年6月から8月までに予測される地上気温の平年差(ºC)。予測開始日は5月1日。

今年の6月から8月までに予測される世界の気温を見てみましょう。SINTEX-Fの予測によると、カナダ西部、バフィン島、ブラジル東部、ノルウェー、スウェーデン、ユーラシアの一部などを除いて、世界の多くの地域で、気温が平年より高くなる見込みです(図1)。一方で、アルゼンチンでは、気温が平年より低くなる見込みです。

図2:2024年6月から8月までに予測される降水量の平年差(mm/日)。予測開始日は5月1日。

次に、今年の6月から8月までに予測される世界の降水量を見てみましょう。SINTEX-Fの予測によると、アメリカ中部、カリフォルニア、メキシコ西部、南アメリカ大陸、インドネシアなどでは、雨が平年より少なくなる見込みです(図2)。一方、カナダの一部、アメリカ東部の一部、中央アメリカ、カリブ海地域、南アメリカ大陸の北部、西アフリカの一部、中央アフリカ、インド、スリランカ、ネパール、ブータン、インドシナ半島の一部、フィリピンの北部、東アジア、ノルウェー、ロシアとグリーンランドの一部などでは、雨が平年より多い予測となっています。

また、日本の夏は気温が平年より高く、降水量が平年より多くなる見込みです。ただし、中高緯度の予測精度には限界がありますので、今後の情報に十分に注意されてください。

今年の6月から8月までの海面水温は?

図3:2024年6月から8月までに予測される海面水温の平年差(ºC)。予測開始日は5月1日。

日々の天気と異なり、季節を決める気候の変動には海水温が大きく関わっています(参照:季節予測とは?)。特に、熱帯は他の海域に比べて海面水温が高く、わずかな水温の変動が世界の気候に影響をもたらします。

SINTEX-Fの予測によると、今年の6月から8月まで太平洋の熱帯域は、平年並みか、中央部で海水温が平年より低く、東部と西部で高くなるラニーニャもどき現象が少しずつ現れる見込みです(図3)。一方、インド洋の熱帯域では、東部で海水温が平年より低く、西部で高くなる正のインド洋ダイポール現象が発達する見込みです(参照)。

図4:2024年5月以降に予測される、エルニーニョもどき指数とインド洋海盆モード指数(ºC)。予測開始日は5月1日。黒線が観測値、複数のカラー線が24個の異なる条件で実験した予測値で、紫線が24個の予測値の平均値。

それでは、これらの海水温の変動が今後どのように発達、減衰していくのでしょうか?そこで、海水温の変動が最もよく現れる海域で平均した海水温の平年差を見てみましょう。熱帯太平洋のエルニーニョもどき指数を見ると(図4上段)、7月には負の値となり、その後9月には-0.5度を下回り、ラニーニャもどき現象が発達する見込みです。ただし、予測値(24個のカラー線)の振幅にばらつきが見られるため、今後の情報に注意されてください。こうした傾向は、他の一部の研究機関の予測結果でも見られています。

一方、インド洋の海水温の変動ですが、インド洋ダイポール指数を見ると(図4下段)、正のインド洋ダイポール現象は今年の夏に発達する見込みです。こうした傾向は、他の一部の研究機関の予測結果でも見られています。

日本を含む世界の気候には、太平洋に発生するエルニーニョ・ラニーニャ現象だけでなく、エルニーニョ・ラニーニャもどき現象インド洋ダイポール現象、他の海域の水温変動もまた、影響を及ぼすことがわかっています。海洋起源の気候変動現象がこれからどのように変動し、世界の気候にどのような影響を与えるか、今後注意してみていきたいと思います。