2024年8月号:今年の秋の天候は?

写真:オフィスから見た首都圏の空と雨雲(JAMSTEC横浜研究所、8月19日15時頃)

皆さま、いかがお過ごしでしょうか?今年も暑さの厳しい夏となりました。8月も後半になり、首都圏では背の高い雨雲に伴い(写真)、夕方から夜にかけて激しい雷雨が増えました。雨が降ると少し涼しくなり、秋を感じさせますね。これから季節が変わりますが、日本を含め世界の天候が気になります。

SINTEX-Fの季節予測によると、今年の9月から11月は、世界の多くの地域で気温が平年より高くなりますが、アラスカとロシア東部では気温が平年より低くなる見込みです。

また、アメリカ南部、カリフォルニア、南アメリカ大陸の多くの地域、西アフリカ、中国南部などでは雨が平年より少なくなる見込みです。一方で、カナダの西岸、フロリダ、中央アメリカ、カリブ海地域、ニュージーランド、アフリカ中部、インド、ネパール、ブータン、インドシナ半島の一部、フィリピン、インドネシア、ヨーロッパ北部、ロシアの一部などでは、雨が平年より多くなる見込みです。

原因の1つとして、海水温の変動が挙げられます。太平洋の熱帯域では、中央部で海水温が平年より低く、東部と西部で高くなるラニーニャもどき現象が発達する見込みです。また、インド洋の熱帯域では、東部で海水温が平年より高く、西部で平年並となり、負のインド洋ダイポール現象が発達する見込みです。

今年の9月から11月までの気温と降水量は?

図1 2024年9月から11月までに予測される地上気温の平年差(ºC)。予測開始日は8月1日。

今年の9月から11月までに予測される世界の気温を見てみましょう。SINTEX-Fの予測によると、アフリカ中部や南部、サウジアラビア、アジア南部の一部、東南アジア、インドネシアの一部などを除いて、世界の多くの地域で、気温が平年より高くなる見込みです(図1)。一方で、アラスカやロシア東部では、気温が平年より低くなる見込みです。

図2:2024年9月から11月までに予測される降水量の平年差(mm/日)。予測開始日は8月1日。

次に、今年の9月から11月までに予測される世界の降水量を見てみましょう。SINTEX-Fの予測によると、アメリカ南部、カリフォルニア、南アメリカ大陸の多くの地域、西アフリカ、中国南部などでは、雨が平年より少なくなる見込みです(図2)。一方、カナダの西岸、フロリダ、中央アメリカ、カリブ海地域、ニュージーランド、アフリカ中部、インド、ネパール、ブータン、インドシナ半島の一部、フィリピン、インドネシア、ヨーロッパ北部、ロシアの一部などでは、雨が平年より多い予測となっています。

また、日本の秋は気温が平年より高く、降水量が平年より多くなる見込みです。ただし、中高緯度の予測精度には限界がありますので、今後の情報に十分に注意されてください。

今年の9月から11月までの海面水温は?

図3:2024年9月から11月までに予測される海面水温の平年差(ºC)。予測開始日は8月1日。

日々の天気と異なり、季節を決める気候の変動には海水温が大きく関わっています(参照:季節予測とは?)。特に、熱帯は他の海域に比べて海面水温が高く、わずかな水温の変動が世界の気候に影響をもたらします。

SINTEX-Fの予測によると、今年の9月から11月まで太平洋の熱帯域は、中央部で海水温が平年より低く、東部と西部で高くなるラニーニャもどき現象が発達する見込みです(図3)。一方、インド洋の熱帯域では、東部で海水温が平年より高く、西部で平年並みとなり、負のインド洋ダイポール現象が発達する見込みです。

図4:2024年8月以降に予測される、エルニーニョもどき指数とインド洋ダイポール指数(ºC)。予測開始日は8月1日。黒線が観測値、複数のカラー線が24個の異なる条件で実験した予測値で、紫線が24個の予測値の平均値。

それでは、これらの海水温の変動が今後どのように発達、減衰していくのでしょうか?そこで、海水温の変動が最もよく現れる海域で平均した海水温の平年差を見てみましょう。熱帯太平洋のエルニーニョもどき指数を見ると(図4上段)、9月には-0.5度を下回り、ラニーニャもどき現象が発達し、その後、冬まで持続する見込みです。ただし、予測値(24個のカラー線)の振幅にばらつきが見られるため、今後の情報に注意されてください。こうした傾向は、他の一部の研究機関の予測結果でも見られています。

一方、インド洋の海水温の変動ですが、インド洋ダイポール指数を見ると(図4下段)、9月には-0.5度を下回り、負のインド洋ダイポール現象が発達し、その後、冬には減衰する見込みです。こうした傾向は、他の一部の研究機関の予測結果でも見られています。

日本を含む世界の気候には、太平洋に発生するエルニーニョ・ラニーニャ現象だけでなく、エルニーニョ・ラニーニャもどき現象インド洋ダイポール現象、他の海域の水温変動もまた、影響を及ぼすことがわかっています。海洋起源の気候変動現象がこれからどのように変動し、世界の気候にどのような影響を与えるか、今後注意してみていきたいと思います。