2016年9月号:台風の季節

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写真:横浜研究所隣りの杉田川

台風が多いですね。写真は台風16号が関東に近づく直前に撮った杉田川です。いつもより水かさが増していて驚きました。9月に入り台風も増え、夏の暑さが少し和らぎましたが、これからの季節、世界の気温や降水量が気になります。SINTEX-Fの季節予測によると、9-11月注1は世界の多くの地域で気温が平年より高くなりそうです。また、熱帯の太平洋ではラニーニャもどき現象または弱いラニーニャ現象が、インド洋では負のインド洋ダイポール現象が最も発達し、これらの現象が地域の降水に影響を与えそうです。

今年の9-11月の気温と降水量は?

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図1 2016年9月から11月までの地上気温の平年差(ºC)。 予測開始日は9月1日。

今年の9-11月に予測される世界の気温です。SINTEX-Fの予測によると、世界の多くの地域で9-11月の気温は平年より高くなりそうです(図1)。一方で、ブラジル北部では、気温は平年より低くなりそうです。

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図2 2016年9月から11月までの降水量の平年差(mm/日)。予測開始日は9月1日。

次に、今年の9-11月に予測される世界の降水量です。SINTEX-Fの予測によると、中国東部、インドシナ半島、東アフリカ、アフリカ南部の一部では雨が平年より少ない見込みです(図2)。一方で、インドネシアや南米の北部、西アフリカ南部、中央アフリカ西部では、雨が平年より多くなりそうです。

また、日本の9-11月は、気温が平年より高く、特に、西日本で降水量が平年より多い予測となっています。ただし、中高緯度の予測精度には限界がありますので、今後の予測情報に注意してください。

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図3 2016年9月から11月までの海面水温の平年差(ºC)。 予測開始日は9月1日。

日々の天気と異なり、季節を決める気候の変動には海面水温が大きく関わっています(参照:季節予測とは?)。特に、熱帯域は他の海域に比べて海面水温が高く、わずかな水温の変動が世界の気候に影響をもたらすことが知られています。

SINTEX-Fの予測によると、9-11月の熱帯太平洋は中央部で水温が平年よりも低くなるラニーニャもどき現象または弱いラニーニャ現象がピークに達する見込みです(図3)。一方、インド洋ですが、東部で水温が平年よりも高く、西部で低くなる負のインド洋ダイポール現象が最も発達する見込みです。そのため、東アフリカでは雨が平年より少なく、インドネシアでは雨が平年より多くなりそうです。

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図4 2016年9月以降に予測される、ニーニョ3.4指数とエルニーニョもどき指数、インド洋ダイポール指数(ºC)。 予測開始日は9月1日。青線が観測値、灰線が9つの異なる初期条件で計算した予測値、赤線が9つのグレーの予測値の平均値。

最後に、世界の気候に影響を与える熱帯域の気候変動現象が今後どのように発達するか、見てみましょう。図4は、熱帯域の現象が最もよく現れる海域で計算された海面水温の平年差になります(図4)。ニーニョ 3.4指数、エルニーニョもどき指数はどちらも、赤線の予測値の平均をみると、9月から年明けにかけてゼロ度をわずかに下回っており、弱いラニーニャ現象またはラニーニャもどき現象のような状態が続くことを予測しています。その後、来年の3-5月には、平年並みの状態に戻りそうです。

一方、インド洋ダイポール指数は、9月から11月までマイナス0.5度を越えて、負のインド洋ダイポール現象が持続することを予測しています。その後、年末にかけて負のインド洋ダイポール現象は減衰する見込みです。

日本を含む世界の気候には、太平洋に発生するエルニーニョ現象やラニーニャ現象だけでなく、インド洋に発生するインド洋ダイポール現象も大きく影響を及ぼすことが分かっています。今年の9-11月は、インド洋では負のインド洋ダイポール現象が、太平洋ではラニーニャもどき現象または弱いラニーニャ現象が最も発達する見込みです。海洋起源の気候変動現象がこれからどのように発達し、世界の気候にどのような影響を与えるか、今後注意して見ていきましょう。

注1: 9月も後半になりましたが、9-11月の予測を示しているのは、秋という季節の気候を意識しているからです。気候の専門家は、1年のうち4つの季節を春(3-5月)、夏(6-8月)、秋(9-11月)、冬(12-2月)に分けて議論することがよくあります。