12月24日までの黒潮「長期」予測(2020年10月21日発表)

黒潮大蛇行から大きく渦がちぎれて、大蛇行が終わっていると言える状況です。今後は大蛇行からちぎれた渦や小蛇行の動きが注目点です。

高分解能予測JCOPE-T DAの開始にともない、

を行っています。

ここでは12月24日までのJCOPE2Mによる長期予測を解説します[1]。長期予測では、黒潮大蛇行の予測がテーマです。

予測

図1は2020年10月15日の状態の推測値、図2・3は11月24日・12月24日の予測です。

黒潮大蛇行の期間は約3年2か月を越え、記録が確かな1960年代後半以降の史上2番目の長さの黒潮大蛇行になっていましたが(最長は1975-80年の4年8か月。「黒潮大蛇行の歴史」参照。)、大蛇行から大きく渦がちぎれ(A)、現在は大蛇行が終わっていると言える状況です(図1~2)。

黒潮は潮岬で接岸しつつあると予測しています(図1~2 B)。串本と浦神の日平均潮位差(気象庁)[2]が大きくなると接岸がはっきりします。潮岬に接岸するにつれて、その東では直進して黒潮が流れるようになるでしょう(BからC, 図1~3)。

大蛇行からちぎれた渦が再びくっついたり、小蛇行(D)が発達して次の大きな蛇行になると、大蛇行の終了ではなく、大蛇行の一時的な中断ということになる可能性もあります。現在のところ、それらは予測されていません(図3)。

図4は、2020年10月15日から12月24日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig1

図1: 2020年10月15日の推測値。矢印(ベクトル)は海面近くの流れの向き(メートル毎秒, 長いほど速い流れ)、色は海面高度(メートル, 相対値)。赤丸()が八丈島の位置。海面高度が低いところは海面水温が低いおおまかな関係があります。

 

Fig2

図2: 図1に同じ。ただし11月24日の予測値。

 

Fig3

図3: 図1に同じ。ただし2020年12月24日の予測値。

 


図4: 2020年10月15日から12月24日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

黒潮大蛇行を作る渦の強さ

図5は、黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標です[3]。東海沖水深1000mの冷水の面積の指標を3℃以下から、3.3℃以下に変更しています。

黒潮大蛇行を作る渦は弱まっています(黒太線)。先週(黒点線)の予測よりも最新の予測(赤線)では弱くなると予測しています。一気に弱くならないのは、大蛇行のちぎれた渦や小蛇行が存在しているからです。これらの動きは注目です。

Fig5

図5: JCOPE2Mで推定と予測した冷水面積(東海沖水深1000mで水温3.3℃以下の海域の面積)の1日ごとの時系列。黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標。単位は104平方キロメートル。黒線は観測を取り入れつつ推定した値。赤線が最新の予測。


  1. [1]2020/4/15日号の予測より、予測モデルへの海面高度観測のデータの入れ方を変更しています。
  2. [2]串本・浦神潮位差については、2016/4/1号「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」で解説したように、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸→潮位差大黒潮が離岸→潮位差小という関係があります。過去の串本・浦神潮位差の解説一覧はこちら
  3. [3]図の見方は「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」を参照


JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。