2021年1月13日までの黒潮「長期」予測(2020年11月11日発表)

黒潮大蛇行から大きく渦がちぎれて、大蛇行が終わっていると言える状況でしたが、小蛇行が東に移動し、大蛇行的な状況が再開する可能性が出てきました。

高分解能予測JCOPE-T DAの開始にともない、

を行っています。

ここでは来年1月13日までのJCOPE2Mによる長期予測を解説します[1]。長期予測では、黒潮大蛇行の予測がテーマです。

予測

図1は2020年11月4日の状態の推測値、図2・3は12月13日・来年1月13日の予測です。

黒潮大蛇行の期間は約3年2か月を越え、記録が確かな1960年代後半以降の史上2番目の長さの黒潮大蛇行になっていましたが(最長は1975-80年の4年8か月。「黒潮大蛇行の歴史」参照。)、大蛇行から大きく渦がちぎれ(A)、現在は大蛇行が終わっていると言える状況です(図1)。コラム「黒潮大蛇行が終わる!?」もご覧ください。

コラム「黒潮大蛇行が終わる!?」も最後に触れたように、小蛇行(D)が東に進み発達して次の大きな蛇行になると、大蛇行の終了ではなく、大蛇行の一時的な中断ということになる可能性もあります。現在、小蛇行(D)は以前より東に移動しています(図1)。黒潮は潮岬で接岸していましたが、離岸しつつあります(図1, B)。

小蛇行(D)はさらに東に進み(図2)、東海沖で蛇行の大きい黒潮大蛇行的な状況になると予測しています(図3)。ただ、大蛇行の特徴である紀伊半島潮岬沖での離岸が小さい(図3, D)など、まだ大蛇行再開を予測しているとまでは言いきれないようです。

以前の大蛇行を作っていた渦Aは遠ざかると予測しています(図2~3)。九州東に小蛇行(D’)の一部が残ると予測しています(図2~3)。

図4は、2020年11月4日から来年1月13日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig1

図1: 2020年11月4日の推測値。矢印(ベクトル)は海面近くの流れの向き(メートル毎秒, 長いほど速い流れ)、色は海面高度(メートル, 相対値)。赤丸()が八丈島の位置。海面高度が低いところは海面水温が低いおおまかな関係があります。

 

Fig2

図2: 図1に同じ。ただし12月13日の予測値。

 

Fig3

図3: 図1に同じ。ただし2021年1月13日の予測値。

 


図4: 2020年11月4日から2021月13日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

潮岬での接岸

串本と浦神の日平均潮位差が大きいことは、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸していることを意味します[2]。図5は気象庁のデータから作成した串本・浦神の潮位差の時間変化です。黒潮大蛇行が始まった2017年後半から潮岬で黒潮が離岸していたため低かった潮位差は、10月に黒潮が接岸したため急上昇しました。潮位差は再び下降しており、黒潮が離岸しつつあることをしめしています(図1)。

Fig5

図5: 2016年6月1日から2020年11月9日までの串本と浦神の潮位差(串本の潮位から浦神の潮位を引いたもの)の時間変化。単位はセンチメートル。データは気象庁のサイトで入手した。

黒潮大蛇行を作る渦の強さ

図6は、黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標です[3]。東海沖水深1000mの冷水の面積の指標を3℃以下から、3.3℃以下に変更しています。

黒潮大蛇行を作る渦は弱まっています(黒太線)。先週(黒点線)の予測よりも最新の予測(赤線)では1月にやや発達する傾向を見せていますが、2020年前半までの勢いを取り戻すとまでの予測はまだ出ていません。

Fig6

図6: JCOPE2Mで推定と予測した冷水面積(東海沖水深1000mで水温3.3℃以下の海域の面積)の1日ごとの時系列。黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標。単位は104平方キロメートル。黒線は観測を取り入れつつ推定した値。赤線が最新の予測。


  1. [1]2020/4/15日号の予測より、予測モデルへの海面高度観測のデータの入れ方を変更しています。
  2. [2]串本・浦神潮位差については、2016/4/1号「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」で解説したように、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸→潮位差大黒潮が離岸→潮位差小という関係があります。過去の串本・浦神潮位差の解説一覧はこちら
  3. [3]図の見方は「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」を参照


JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。