2021年2月10日までの黒潮「長期」予測(2020年12月9日発表)

黒潮大蛇行から大きく渦がちぎれて大蛇行が終わっていると言える状況でしたが、小蛇行が東に移動し、大蛇行の状況が再開していると言えます。しかしこの状況は渦がちぎれて続かないと予測しています。

高分解能予測JCOPE-T DAの開始にともない、

を行っています。

ここでは来年2月10日までのJCOPE2Mによる長期予測を解説します[1]。長期予測では、黒潮大蛇行の予測がテーマです。

予測

図1は2020年12月2日の状態の推測値、図2・3は来年1月10日・2月10日の予測です。

黒潮大蛇行の期間は約3年2か月を越え、記録が確かな1960年代後半以降の史上2番目の長さの黒潮大蛇行になっていましたが(最長は1975-80年の4年8か月。「黒潮大蛇行の歴史」参照)、大蛇行から大きく渦がちぎれ(A)、いったん大蛇行が終わった言える状況でした(コラム「黒潮大蛇行が終わる!?」を参照)。

一方で九州東から四国南にあった離岸(小蛇行, D)が紀伊半島に南に移動し潮岬で離岸したことから、大蛇行の状況が再開していると言える状態です(図1)。

この蛇行Dはさらに大きくなる予測です。しかし、その後に渦としてちぎれ、九州東にあった残りの小蛇行(D’)での離岸に変わる予測です。その後、この離岸は解消され、大蛇行が再び終わった状況に戻ると予測しています。

以前の大蛇行を作っていた渦Aは遠ざかると予測しています(図2~3)。黒潮は八丈島の北を継続して流れるでしょう(C, 図1~3)。

図4は、2020年12月2日から来年2月10日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig1

図1: 2020年12月2日の推測値。矢印(ベクトル)は海面近くの流れの向き(メートル毎秒, 長いほど速い流れ)、色は海面高度(メートル, 相対値)。赤丸()が八丈島の位置。海面高度が低いところは海面水温が低いおおまかな関係があります。

 

Fig2

図2: 図1に同じ。ただし2021年1月10日の予測値。

 

Fig3

図3: 図1に同じ。ただし2021年2月10日の予測値。

 


図4: 2020年12月2日から2021年2月10日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

潮岬での接岸

串本と浦神の日平均潮位差が大きいことは、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸していることを意味します[2]。図5は気象庁のデータから作成した串本・浦神の潮位差の時間変化です。黒潮大蛇行が始まった2017年後半から潮岬で黒潮が離岸していたため低かった潮位差は、10月に黒潮が接岸したため急上昇しました。潮位差は再び下降しており、黒潮が離岸していることをしめしています(図1)。

Fig5

図5: 2016年6月1日から2020年12月6日までの串本と浦神の潮位差(串本の潮位から浦神の潮位を引いたもの)の時間変化。単位はセンチメートル。データは気象庁のサイトで入手した。

黒潮大蛇行を作る渦の強さ

図6は、黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標です[3]。東海沖水深1000mの冷水の面積の指標を3℃以下から、3.3℃以下に変更しています。

黒潮大蛇行を作る渦は渦Aがちぎれたことで弱まっています(黒太線)。小蛇行Dが東に進んできたことで(図1)、やや回復しています。大蛇行が再開したと言っても、7月までの強さを取り戻してはいません。最新の予測(赤線)では渦がちぎれることから(図2,3, D)、下降を予測しています。、先週(黒点線)の予測より下方修正です。

Fig6

図6: JCOPE2Mで推定と予測した冷水面積(東海沖水深1000mで水温3.3℃以下の海域の面積)の1日ごとの時系列。黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標。単位は104平方キロメートル。黒線は観測を取り入れつつ推定した値。赤線が最新の予測。


  1. [1]2020/4/15日号の予測より、予測モデルへの海面高度観測のデータの入れ方を変更しています。
  2. [2]串本・浦神潮位差については、2016/4/1号「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」で解説したように、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸→潮位差大黒潮が離岸→潮位差小という関係があります。過去の串本・浦神潮位差の解説一覧はこちら
  3. [3]図の見方は「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」を参照


JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。