2020年9月から2021年2月にかけて黒潮大蛇行をつくる渦が移動し、中身が入れ替わりました。その様子を見てみましょう。
渦の入れ替わり
図1は2020年9月15日から2021年2月4日までの黒潮の変化をしめしたものです。
9月15日時点で、反時計回りの渦Aが黒潮大蛇行を形成していました(図1(a))。他方、九州東・四国南に別の反時計回り渦Dがあり、小蛇行となっていました。
その後、渦Aがちぎれ、黒潮大蛇行はいったん終わったとも言える形になりました(図1(b) (コラム「黒潮大蛇行が終わる!?」参照)。
しかしながら、渦Dが渦Aとすれ違いながら東に進むことで、渦Aの代わりに黒潮大蛇行を作り、黒潮大蛇行は再開しています(図1(b)-(d))。
一方で、渦Aは西に進み(図1(c))、1月末から2月初旬にかけて黒潮にくっつくことで、渦Dの代わりに小蛇行になりました(図1(d))。
途中、黒潮の流路は大きく変化しましたが、形の上では元にもどったことになります。黒潮大蛇行は続いていますが、中身はすっかり入れ替わっています。このような大きな黒潮大蛇行の変化が確認されたのはおそらく初めてです[1]。
図2は2020年9月15日から2021年2月4日までのアニメーションです。
図2: 図1に対応する図の2020年9月15日から2021年2月4日までのアニメーション。
渦Aの動きの予測
渦Aが九州南東で黒潮にくっつくことは2020年12月16日号から予測できていました。ただし、その時はくっつくのは1月初旬と予測しており早すぎました。その後、予測が次第に修正され現在にいたります。くわしくは黒潮予測検証をご覧ください。
- [1]1975-1980年の黒潮大蛇行期間中の大蛇行中の1978年にも黒潮大蛇行から大きく渦がちぎれました。この渦は観測した神戸海洋気象台の春風丸にちなんで「はるかぜ」と呼ばれています。「はるかぜ」は渦Aほど大きくは移動せず、黒潮に再び吸収されました。
参考文献: 小長俊二・西山克信「切離した黒潮冷水塊”はるかぜ”の挙動と海山」(pdf)↩