new2025年7月30日までの黒潮「短期」予測 (2025年7月10日発表)

    • JCOPE-T DAによる短期予測(20日先)
    • JCOPE3Mによる長期予測(2か月先)

を行っています。

ここでは7月30日までのJCOPE-T DAによる短期予測を解説します。短期予測では、黒潮の沿岸への影響がテーマです。

現状と予測

図1・2・3はJCOPE-T DAで計算した7月9日・7月20日・7月30日の黒潮の状態です。

伊豆諸島付近で蛇行が発達しているのと同時に(図1)、黒潮からちぎれていた渦が九州される形で九州東にも蛇行ができています(図1 A”)。

伊豆諸島付近の蛇行(A)は蛇行こそ大きいものの、潮岬で接岸していたり、八丈島()の南に黒潮があったりと、いわゆる黒潮大蛇行とは言えない形です(長期予測の記事参照)。この蛇行は次第に縮小すると予測されています(図2~3)。

黒潮大蛇行の時は、関東から東海沿岸の水温が高くなり、沿岸地域に蒸し暑い夏や豪雨をもたらすという研究があります[1]。今の黒潮流路は黒潮大蛇行とは言えませんが、黒潮の分岐流による暖水の流入は東からにせよ(図1, 図5も参照)、西からにせよ(図2~3)続き、関東から東海の沿岸では水温が高めに推移しそうです。

九州東の蛇行(A”)は次第に東に広がってきます(図1~3)。足摺岬、室戸岬、潮岬と次第に黒潮の離岸気味になりそうです。

夏に向かって、全体的に水温の高い状態が続きます。

図4は7月9日午前9時から7月30日午前9時までの予測のアニメーションです。JCOPE-T DAは潮の満ち引きも計算しているので、1時間毎の図でアニメーションにしています。

Fig1

図1: 2025年7月9日午前9時の予測値。矢印(ベクトル)は海面近くの流れの向き(メートル毎秒, 長いほど速い流れ)、色は海面温度(°C) 。1度毎の等温線も薄く加えた。青丸()が八丈島の位置。クリックすると拡大します。

 

図2: 図1に同じ。ただし2025年7月20日午前9時の予測値。

 

Fig3

図3: 図1に同じ。ただし2025年7月30日午前9時の予測値。

 


図4: 2025年7月9日午前9時から7月30日午前9時までの1時間毎の予測のアニメーション。クリックして操作してください。全画面表示にしたり、途中で停止したりできます。

今週のハイライト: 東海・関東沖の黒潮

図5はJAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイトで見た、人工衛星「ひまわり」で観測された7月9日の海面水温とモデルで推定された流速です。

東海・関東沖で黒潮が大きく蛇行していますが、上でも解説したように黒潮大蛇行らしい流路ではありません。黒潮が流れているのが八丈島の南になるので、八丈島付近では水温が低めになっています。房総半島沖の黒潮から西に分岐した黒潮の水によって関東・東海沿岸では水温が高めになっています。

Fig5

図5:2025年7月9日のー日平均の人工衛星「ひまわり」観測の海面水温(色)とモデルによる流れの推定値(①で指定)。水温の色の範囲の色の範囲を26~31度とした(②で指定)。

 

  1. [1]東海地方に豪雨と猛暑をもたらしたのは「黒潮の大蛇行」の影響と解明 ~黒潮が及ぼす影響を高解像度の気候シミュレーションで分析~(2024/12/23東北大学プレスリリース)


JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。