2024年7月22日までの黒潮「短期」予測 (2024年7月3日発表)

高分解能予測JCOPE-T DAの開始にともない、

を行っています。

ここでは7月16日までのJCOPE-T DAによる短期予測を解説します。短期予測では、黒潮の沿岸への影響がテーマです。

現状と予測

図1・2・3はJCOPE-T DAで計算した6月26日・7月6日・7月16日の黒潮の状態です。

黒潮大蛇行(A)が続いています(図1, 長期予測も参照)。

A→B→Cという大蛇行からの北上流のS字カーブが保たれると予測しています(図1~3) 。東海から関東にかけて黒潮が沿岸に近づきそうです(B-C) 。房総半島の黒潮の間に水温の冷たい海域ができています(図1 C)。今後、温度が上昇する可能性があります(図3)。

四国・足摺岬では黒潮が近くを流れていますが(図1~2, D)、次第に離れると予測しています(図3) 。

夏に向けて全体的に水温が上がっていきます。

図4は7月2日午前9時から7月22日午前9時までの予測のアニメーションです。JCOPE-T DAは潮の満ち引きも計算しているので、1時間毎の図でアニメーションにしています。

Fig1

図1: 2024年7月2日午前9時の予測値。矢印(ベクトル)は海面近くの流れの向き(メートル毎秒, 長いほど速い流れ)、色は海面温度(°C) 。1度毎の等温線も薄く加えた。青丸()が八丈島の位置。クリックすると拡大します。

 

図2: 図1に同じ。ただし2024年7月12日。

 

Fig3

図3: 図1に同じ。ただし2024年7月22日午前9時の予測値。

 


図4: 2024年7月2日午前9時から7月22日午前9時までの1時間毎の予測のアニメーション。クリックして操作してください。全画面表示にしたり、途中で停止したりできます。

 


今週のハイライト: 黒潮に乗る雨の影響

JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイト (「JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイトがリニューアル」)から特徴的な図を毎週紹介します。黒潮親潮ウォッチは1週間に一回の更新ですが、海中天気予報のサイトではほぼ毎日予測が更新されます。

図5は7月3日12時のモデルによる塩分の推定値です。梅雨による雨のために沿岸で塩分が低くなっています。沿岸の低塩分の水は黒潮に取り込まれて、黒潮の流れに沿って塩分が低下しています。

同じ事は、図6の人工衛星「ひまわり」のクロロフィルa(植物プランクトンの量の指標)の観測によっても確かめることができます。川から豊富な栄養塩のために沿岸で濃度が高くなっているのと同時に、塩分と同様に黒潮上にも濃度が高い部分が伸びています。

参考文献:
Chang, Y.-L. K., Varlamov, S. M., Guo, X., Miyama, T., & Miyazawa, Y. (2023). July 2020 heavy rainfall in Japan: Effect of real-time river discharge on ocean circulation based on a coupled river-ocean model. Ocean Dynamics. https://doi.org/10.1007/s10236-023-01551-1

 

Fig5

図5:7月3日12時のモデルによる塩分の推定値(色、①で指定)。色の幅は28から35に設定した(②で指定)。

 

Fig5

図6:7月3日12時の人工衛星「ひまわり」によるクロロフィルaの観測値(色、①で指定)。色の幅は0.01から100mg/m3に設定した(②で指定)。

 

 



JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。