黒潮続流と暖水渦のダブルパンチ (親潮ウォッチ2024/11)

見通し(長期予測)

海洋予測モデルJCOPE2Mで、約2か月先までの予測を行っています。図1はJCOPE2Mによる水深100メートル[1]で11月19日の水温(色、℃)と流れ(矢印)です。赤色が黒潮の影響を受けた暖かい水温で、青色が親潮の影響を受けた冷たい水温です。親潮の影響を受けている範囲の指標として、水温5°Cに赤線を引いています。

もともと北海道南東部に暖水渦(B)があり、水温を高くしていまいた。それに加えて、岸沿いに黒潮続流が極端に北上し、岩手県の緯度まで達しているため(A)、水温が非常に高くなっています(図5も参照)。

気象庁が診断している親潮の面積も平年より昨年以上に小さくなっています。

これからの季節は親潮が強くなるため、暖水渦(B)は南下し、黒潮続流に吸収されそうな予測になっています。黒潮続流は変型しながらも、高い緯度まで影響を与えそうです(B)。

日本海では水温が高く、北海道北部で水温5度線の分布が平年よりも広がっており、それが続く予測です(C)。一方、気象庁の対馬暖流の勢力の時系列(日本海における深さ 100m の水温が 10℃以上の領域の面積)は平年より極端に大きくなっています。

図4は2024年11月19日から来年1月28日までの予測をアニメーションにしたものです。

図1: JCOPE2Mによる2024年11月19日の水深100メートルでの水温(色、℃)と流れ(矢印)。赤色が5°Cより高い黒潮の影響を受けた暖かい水温で、青色が5°Cより低い親潮の影響を受けた冷たい水温。親潮の影響を受けている範囲の指標として水温5°Cに太い赤線を引いた。青線は1993-2020年平均の水温5°C線で平年の親潮の影響範囲。

 

図2: 図1に同じ。ただし2024年12月28日の予測。

 

図3: 図1に同じ。ただし2025年1月28日の予測。

 


図4: 図1に対応する2024年11月19日から2025年1月28日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

今月のハイライト: 暖水渦と親潮

JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイト (解説は「JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイトがリニューアル」) 。このサイトでは上の予測(JCOPE2M, 約9kmメッシュ)よりも高分解能のモデル(JCOPE-T DA, 約3km)の様々な図を見ることができます。モデルの結果と人工衛星「ひまわり」の図を重ねることもできます。

図5は11月26日の人工衛星「ひまわり」による海面水温の観測値です。

黒潮続流の北上(A)と暖水渦(B)の影響で、高い緯度まで水温が高くなっています。

Fig5

図5:2024年11月26日一日平均の人工衛星「ひまわり」海面水温観測(色)(①で指定)。色の幅は-2~31℃とした(②で指定)。

 

5月から11月までの経過

図6は図4に対応する5月1日から11月19日までのアニメーションです。

5月まで黒潮続流が岸沿いに岩手県沿岸まで北上する極端な状況でした。その後、黒潮続流の北端から渦がちぎれ、北上し北海道南東にとどまりました。

黒潮続流は渦がちぎれた後は、岸から離れ、北上する位置は岸から離れていましたが、次第に北上位置が西に移動し、11月には再び岸沿いに極端に北上する状態になりました。


図5: 図4に対応する2024年5月1日から2024年11月19日までのアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

 

短期予測

長期予測(JCOPE2M, 約9kmメッシュ)よりも高分解能のモデル(JCOPE-T DA, 約3km)による20日予測のアニメーションを、YouTubeに1週間に一度の間隔で掲載しています。親潮ウォッチの更新は月に一回ですが、一週間に一度の予測のアニメーションも参考にしてください。

 


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黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。 JCOPE-T-DAによる短期予測はJAXAのサイトで見ることができます。 4日毎に更新されるJCOPE2Mによる親潮の長期解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号2017年2月1日号で解説しています。

  1. [1]天気の影響を受けやすい海面よりも海流の状態を反映していると考えられます。