最近の水温の状況
最近の日本周辺の海面の水温の状況を見てみます。
図1は、4月24日と5月22日の海面の水温の平年との差を見たものです[1] 。平年より高い場所が赤っぽい色、低い場所では青っぽい色になっています。図2は、同じく水深100mの図です。水深100mでも海面と同じ変化が見られれば、水温の平年との差が天気だけでなく海流の影響を受けている可能性が高くなります。
黒潮が再び北上の気配(親潮ウォッチ2025/5)で解説したように、親潮が弱まりつつあるので、東北沿岸近くで先月(図上)よりも今月は(図下)平年より水温が低い海域が減り、平年より水温が高い海域が増えています。
先月は特に日本海北部の海面下(図2上)で水温がかなり高い状態でしたが、緩和されてきています。
黒潮大蛇行から渦がちぎれた状態なので(黒潮予測記事参照)、海面下(図2)で特に冷水渦が見えています。
今後の日本周辺の水温については、「季節ウォッチ」も参考にしてください。
海洋熱波・海洋寒波
海洋熱波とは、数日以上極端に海水温が上昇する現象です。その発生頻度は近年に大幅に増加しており、海洋生態系に与える影響が危惧されています([プレスリリース] 北海道・東北沖で海洋熱波が頻発していることが明らかに)。
図3は、海洋熱波でよく用いられている基準[2]を使って日本周辺の海面での海洋熱波・寒波の発生状況を見たものです。同じく、図4は水深100mでの海洋熱波・寒波の発生状況です。
日本周辺では海洋熱波が発生している場所がまばらになっています。例外的にオホーツク海や沖縄周辺で強い海洋熱波が見られます。
海面下では、黒潮大蛇行から切り離された冷水渦が強い海洋寒波を発生させています。
アニメーション
図5は水温、平年からの差、海洋熱波指数のアニメーションです。
図5: JCOPE2Mによる2025年4月24日から2025年5月22日までの水温、平年からの差、海洋熱波指数。左が水温(等値線, ℃) 、温度の平年との差(色, ℃) 。平年は1993-2020年平均。右が海洋熱波指数。上段が水深1m。下段が水深100m。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
- [1]この記事では、今年の値はJCOPE2Mを使っています。平年の値はJCOPE2M再解析の1993~2020年の平均を使っています。JCOPE2M再解析データは学術研究利用では無償で公開しています。↩
- [2]JCOPE2Mの1993~2020年のデータを使い、統計的に10%以下(90パーセンタイル)の高温が5日以上続いた場合に海洋熱波としています。平年との差が海洋熱波の基準(90%タイルと気候平均の差)の2倍以上である場合は2,3倍以上である場合は3とカテゴリー化しています。逆に統計的に10%以下(10パーセンタイル)の低温が5日以上続いた場合には海洋寒波としています。↩